アントワープの続きである。
ワッフルの店を出て通りを歩いているとイタリアン惣菜店があったので、何気なくそのショーウィンドウを数枚カメラに納めつつ中に目をやると、素敵な笑顔をくれた店員さん。この笑顔にとても救われた気持ちになった。
何故なら、実はこの日ある店で調子にのって店内でバシャバシャ写真を撮っていると、店主らしき女性から「もう十分でしょ!」と怒鳴られ掃き出される様にして追い出された。
当然こちらが悪いから仕方がない。大人になって叱られることもそうないのでダメージは大きかった。そのため、店内や店先でカメラを構えることが少し怖かったがつい癖で撮ってしまう。
そんな失礼な奴にも笑顔をくれたこの女性に感謝したい。
海外に来て楽しいのは生活様式の違いを楽しめること。
街を形成する建物や人を作る食べ物の違いにいつも感心する。
その地の発酵食品はそこに住む人の健康にとても影響を与えているので、ヨーロッパに来てチーズ店を覗くのは学ぶことが多い気がする。
ケーキ屋かと思ってしまったくらい店先にはかわいいチーズが並んでいる。
通りにある新しい建物はこんな感じで、ソリッドではないのに削ぎ落とされて綺麗なものが多い。
ただ通りを歩いているだけなのに軽快な気分にさせられるのは、こういった建物のおかげだ。
ブリュッセルでもそうだったのだが、APOTHEEK(薬局)が非常に多くある。
日本のコンビニの数くらいあり、アントワープのコンパクトな街でも50mおきにあるくらい。
中を見比べたわけではないのでその違いは不明だが、とにかくAPOTHEEKという文字が目につく。
薬局以上に多いのがブティック。アントワープがファッショナブルな街というそのイメージの通り、洋服店が撒き散らされていてとても華やか。
この様に子供達が着ている安全用のベストもおしゃれの一つに見えるほど。
かと言って過激なファッションの人はあまりおらず、上品な装いが多い。
最も派手な感じはこの人くらいだった。
そんな街だからか、ただの工事現場も何かのインスタレーションか?と思ってしまう様な雰囲気。最もこれは国立美術館の前だったからそう思えるのか。
注意喚起のポールでさえ持ち去りたくなる。
そんな感じで街のあちこちにかわいかったりかっこいいものが点在しているのだが、日本のトラックでさえもこうしてフォトジェニックな対象になっているのだから、この街にどんどん惹き込まれていく。
何気無い夕方の街の景色でさえこうして絵になるのだから、毎日の生活の中にどれだけの高揚感が訪れるのだろうか?なんて考えてしまう。
しかし、全てがそんな格好良く洒落たシーンばかりではないことにも気づく。
アジア感を出したカフェでハチマキをし、一体何をしているのだろうか?そしてどういう関係なのだろう?
こんな不思議な光景がふと現れるからこそ益々この街の深みにはまっていくのだ。
アントワープと言えば、フランダースの犬のネロとパトラッシュ。
大聖堂の前にその像があるとのことで、近くを通りかかったついでに見てみることに。
こんな感じである。想像していた美しい光景とは違う。
もちろん愛すべき雰囲気ではあるが、あのアニメのラストシーンの様に決して泣けないぞ。
そもそもこの国と日本での伝え方は違うのかもしれない。
写真を撮ろうと構えると、この山なり感が気持ちいいのか、像を自転車で乗り上げていく不届きな奴が現れたのだが、安らかに寝ている彼らの表情は変わらず穏やかなまま。何か大事なことを教えられた様な気がする。
神の様なその穏やかな寝顔と同じ様に、気を荒立てず平穏に旅を続けることにするよ。
ネロそしてパトラッシュよ、ありがとう。