PRODUCT STORY

Entries by Naoki Ei, the Director/Designer of CITERA

 

今期は先シーズンに引き続きリジッドデニムがアップデイトされて登場。そしてブラックデニムも出た。ブラックと言っても加工しちゃったので色的にはすっかりグレー。ブリーチとその他ちょちょいと加工をして完成。とてもいいグレー感。インディゴも青みと光沢感の強い洗練された生地感。そしてどちらも耳付き(コインポケットも耳付きで)。






リジッドについては、アイテムページと以前メルマガでも2回ほど書いたのでこれ以上書くこともない。なんてことはなくいくらでも書ける程デニム生地は大好物。

この生地は50年代後半以降に紡績や生地生産の技術が向上し、わりと安定してきた頃のものをターゲットに作っている生地。いわゆるダブルエックス最終期。紡績と織機の技術が安定したとは言え、まだ未完成なので雰囲気はしっかりとある。インディゴの深い濃さよりも青みが前に立ち、糸のムラ感が減ったことで表面が安定し光沢感も増して洗練された美しさの度合いが高い。

しかし、昨今の市場で人気の高い生地は40年代~50年代前半までの色が濃くマニアの間で「真っ紺」と呼ばれるもの。それは深海の暗闇の中にうっすら青が見える様な深い青、という濃さを表すために言っていると思うのだが、なぜその時代のデニムは色が濃かったのだろう? 勝手に想像するに、その頃使っていた染料が濃かったから、という単純な理由なのだと思う。その頃使っていたインディゴの染料の成分とか配分とか綿花の具合とか、色々な要素が重なった結果なのだろう。







*画像は50年代前半のLEVI'S社が使ったデニム生地

そしてその頃は、糸にする際の紡績の機械が未熟だったために太さのムラが大きく、また太いところも時に2倍くらいの箇所もあることで不必要に立体感が出てしまったりする。そうしたことで色落ちの仕方も1本の縦糸に対して強弱がはっきりしてたり、奥行き感が出たりで全体的にディテール感が増し、より味のある色落ちや色味が出たわけである。これらは結果的なことであり、狙って作られたわけでもなく、後になって「今のものより美しくないか?」と誰かが気づきヴィンテージとして崇められる様になったわけだ。それに初めに気づいたのは日本人と言われている。

「ヴィンテージデニム」よりもずっと以前から、「過去のものの中には今にはない美しい品がある」という概念はあったわけだから、デニムについても遅かれ早かれ誰かが気づいていただろう。技術が向上すると失われる技術があり、その技術は再現不可能となる。それが美しさを産むものであれば、当然その価値が上がるというわけだ。技術が向上することはいいことなので、過去の技術は劣っており誰もそれを大事に思ったり守ったりしないので後に残らない。だからこそ振り返ると尊いものとなっているのである。


で、なんでしたっけ?あ、CITERAのリジッドデニムね。
洗わないでノリがついたままのものと、一度洗ってノリを落とし定期的に洗って(月1くらい?)という2本ばきでどんな違いになるかを楽しんでる最中なので、その結果はそのうち何かで見せましょう。みなさんの変化具合も気になるところなので、見せ合う機会でも作りたいですね。



さてブラックのブリーチをしたデニムの方はというと、正直これといったウンチク的なことはありません。アイテム名の「BB」の意味は「ブラックをブリーチした」その頭文字です。それ以上の意味はありません。インディゴのリジッドと比べてどこか薄っぺらいですね、すみません。でも、でもですよ、このくらい綺麗に満遍なく色が落ちつつ、のっぺりもせずっていうブラックデニムって探すとないんです。だからこういうのがずっと欲しかった。例えて言うなら「うす汚ねぇシンデレラ」。これわかる人は40歳オーバーですね。突拍子もないこと言ってすみません。



実際はうす汚れてないんですけど、「ぱっと見しらっちゃけてるけど、綺麗で品がある」ってことを言いたかったものでそんな風に例えてみました。だって「うす汚ねぇシンデレラ」って言われてたのは若かりし日のキョンキョンですからね。貧しくて自作の紙の鍵盤で練習してましたね……。

で、なんでしたっけ?あ、CITERAのブラックデニムね。
ブリーチとアタリを出したい箇所には軽くなでる様にサンド加工をしてます。なのでサイドのセルビッヂのアタリや裾、ポケット口などにしっかりと雰囲気が出てます。そして鏡面加工のリベットは後付けにしてピカピカのままですので、そのコントラストがまた良くて。1枚ずつ手押しのパッチがそれぞれ表情が違ってなかなか手が込んでるんです。作らされる側からしたら「めんどくせぇシンデレラ」なわけです。工場さん、ほんとごめんなさい。お陰様でリジッド共々評判です。



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