CITY PACKER METの「MET」とはMETROPOLITANの意味。METROPOLITANは辞書には「大都市の、首都の」とあるが、僕の中では「そこ(大都市)で暮らす人」とか「都市人」という認識である。英語圏の人はどんな感覚なのか英語圏ではない僕には到底わからない。「江戸っ子」のことは良くわかるのだが……。
都会で暮らす人向けのバックパックというわけではないけれど、何となくそれっぽいバックパックが世間にはありそうでない。
「都会的」と謳い、様々なブランドから売り出されている、ツルッとしたシンプル過ぎるデザインのものは僕の心を突かないし、面白くもない。
まあ面白いものを作ろうなんて思ってもないだろうから、「面白くもない」なんて言われたら憤慨してしまうだろう。
言い直すとすれば「退屈な商品」だ。
同じかな……。
さて、CITY PACKER METは、メッシュ、バックル、Dリング。
これがあるバックパックが欲しい!と思い脳味噌をこねくり回して形にしたもの。
出発点は先の3要素。だから全部が正面にある。出来上がったバックパックに機能としてそれらを散らしたわけではない。
人が背負った時、後ろの人からそれらが見える必要があり、尚且つ機能としても成り立つデザインであって、適当にそれらがそこに付いているわけではない。
もちろんそれら3つが適した場所にある前に、バックパック自体のデザインが重要であって、どんなデザインでもいいわけではない。街で持つための理想のバックパックの形を描かなくてはならない。
サイドパネルのカットは台形でとか、全ては上に向かってシェイプされてて、とか。そんな感じで造形的に退屈ではなく、そして都会的でスマート、また格好いいものであるように描いていく。
最初は平面デザインなので、分かりやすく直線で描き始める。
直線的なデザインの時点では、四角と台形と三角だけで形成されている。
直線だから当たり前であって実際のものにはない面白さがここには存在する。
この面白さを維持したまま曲線を持った実際のバックパックに仕上げていく。
できるだけ角を持たせたり、できるだけ長い直線が見える箇所を設けたり、曲線だけど正面から見ると直線に見えたりとか。
デザインを描き直しながら発展させていき、サンプルでも直していって理想の形に仕上げていく。しかし、着地点は初めに頭に浮かんだイメージである。なのでデザインしながら作っていくというよりも、そのイメージにどうやって近づけるかどうかである。なかなかそこにたどり着けない。頭では簡単に立体図が描けるのに、それを実物にするのが難しい。
人の頭の中では自由に、しかもディテールまで立体的にイメージできるけど、まずそれを平面にだまし絵のように描かなくてはならないこと、そしてそれを、生地と生地を縫い合わせて目の前に形として存在させなくてはならない。これが結構伝わらないために歯がゆくも面白いところである。
何年か先、頭でイメージしたものを直接3Dプリンターで形にできるようになれば、サンプル工場の人もどれだけ楽になることだろうか。
こめかみ辺りに「ブスッ!」とUSBでも差し込み、トイレで力むように3Dプリンターで絞り出すなんて時が来ることを願っている。
もちろん3Dプリンターが力んで出力するなんてアナログ過ぎる、というかそんなバカなことは決して実現しないことくらい分かっている。
そっちの方が面白いんですけどね。