PRODUCT STORY

Entries by Naoki Ei, the Director/Designer of CITERA

 

これは「速度制限のない高速道路」として有名なドイツにある高速道路の標識。
車を走らせたこともないので詳しいことはよく知らないが、制限のある区間もあるそうで全てにおいて速度無制限ではないようだ。
人生で1度くらいポルシェにでも乗ってぶっ飛ばしてみたいものだ。
と言っても、スピード狂ではないのでそこを走ったとしても飛ばさないだろう。




 

ドイツのAUTOBAHNはさておき、CITERAのAUTOBAHNといえば先シーズンの春夏にリリースし好評であったため、これからの時期に合う厚めのツイル生地を使い、細かい箇所も微調整して今期もリリース。
ツイルと平織どちらも機能素材PERTEXで、前期同様表情の違う2種の生地のコントラストが個性的でありながらも"アバンギャルドな服"ではないところに人気の理由があるのではなかろうか。


 

コム・デ・ギャルソンだったら、ギャザーやフリルっぽいものがついていたり、色糸ステッチだったりして生活指導係的な上司から嫌味を言われそうで「これはちょっと会社には着ていけないぞ」感があるし、行き過ぎたミリタリーという感じでポケットに服機能が備わった「機能的過ぎてもはや機能的ではない服」というのもどうも現実的ではない。
もちろんファッション的視点ではそれらは面白いし、格好いいし、素敵なので何も問題も文句もない。ただ、ファッションとは無縁の会社に着ていくにはいささか勇気が要るだろう。




 

そういう意味で言えば、これはそのファッション性豊かな服と、一般的なスーツの間に位置する"隙間スーツ"と言ってもいいかもしれない。
お堅い上司に怒られもせず、個性もあって機能性もある。
他人と違いながらも過度に主張せず機能的というのが今の世の中にあっているのかもしれない。



 

そうなるとやはりネーミングも大事になる。
これ見よがしに今っぽいネーミングでは興醒めしてしまうから注意が必要だ。
ドイツのAUTOBAHNとの関係はこれっぽっちもない。
ただ何となくその標識とジャケットのカットのデザインが似ていることに後から気づいた。
AUTOBAHNという響もスマートに思えたし、スピード感というか現代的というか、何かしっくりハマる雰囲気がそこにはあった。

まあネーミングの由来なんて、後からいくらでも理由づけできる。
「アウトバーンをポルシェGT3で時速300kmでかっ飛ばすビジネスマン」を想定してとか、「会社の上司にクラフトワークのメンバーがいたらこんなスーツを着てる」とかテキトーな作り話はいくらでもできるわけで、はっきり言って由来なんて重要ではない。
名前の響きとその物自体がマッチしていればそれでいい。


 

ネーミングの役割も大きいがそれよりも重要なことは、このジャケットとパンツが、着た人の生活においてパフォーマンスを上げる要因の一つになるかどうかだ。
仕事への意欲が上がるとか、ジャケットを着る必要はないけど着ることで周囲からのリアクションがあって気分がいいとか、もっと単純に他のスーツより身体的に楽だとか。
そんな感じで何かしらの変化が生活内で起こることが重要であり、そうあるためのウェアデザインを心がけている。

21世紀になり20年近く経ち、洋服においてトレンドやマーケット状況の変化はあるが、世の中にインパクトを与える程の昔の様な変化はほとんどない。
しかし我々を取り巻く環境とライフスタイルは変化に満ちている。
その中で洋服のあるべき位置とは、それぞれが思い描くライフスタイルを実現するためのサポート役ではないだろうか。
CITERAというブランドはそうあるべきだと思っている。


 

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