PRODUCT STORY

Entries by Naoki Ei, the Director/Designer of CITERA

 

ビシッと一本筋の通った人間になりたい。
そんな人間には簡単になれそうもないので、ビシッとブルーの一本線の通ったボーダーのTシャツを着ることでそうなれるよう努力して生きていこう。休み休みでいいので。


休みといえば、今年のゴールデンウィークは前代未聞の10連休。
元号が変わり、次の天皇陛下の即位もある。ノンストップの大型連休と新しい時代の到来で慌ただしくなりそう。
本来、元号が変わるということは天皇陛下が崩御されてからなることなので、騒がず自粛ムードの中新元号の発表があるはずだが、今回はそうではなくしばらく前から発表予告があったもんだから、みんなあれこれと勝手に考え、その結果世間には何となく「期待はずれ」な雰囲気。
この「期待はずれ」はもちろん「令和」というとても穏やかで優しい響きに対してだ。この元号、僕は悪くない、というかとても良いと思う。

「期待はずれ」というのは、世間(と言ってもテレビとかその程度)でささやかれていた通りに首相の名前の一文字が元号に入ることで、みんなが反発し世の中が騒がしくなることへの期待だったのではないか。もしそうだとしたら、ただ何かにつけて文句を言いたい人が多い世の中だ、ということ。
昭和に慣れ親しんだ者(と言っても14年程度)にとってはとてもしっくりくるこの元号はどんな時代になるのでしょう…… 楽しみです。

もうすぐ新たな時代の幕開けだ(日本だけの話)。


連休の途中からフェードインしてくる新時代。
それはこのボーダーTシャツのブルーのラインの様なもの。
要するにブルーが現れてもまた元のボーダーに戻っていくのだけれど、それが今回の期待はずれ感の様に不意にやってきてもそんなことすぐに忘れていつの間にか生活に馴染む、ということと重なって思えてしまう。

そして、これって結構奇抜なデザインだと思うのだけれど意外にそう見えない不思議なライン。だけどやっぱり目に止まる。しかも目が霞んだ様に見える、霞んでないのにね。ちょっとしたトリックの様だ。


このTシャツが何で「ロスコ」という名なのかは、マーク・ロスコのシーグラム壁画の様に、ぼかしがかかったところがあるから。似ているわけではないけれどそんな理由。

ロンドンの美術館テート・モダンに、ロスコのシーグラム壁画が集められた、通称「ロスコ・ルーム」と呼ばれる部屋がある。ぼやぼやした大きなシーグラム壁画の作品に四方を取り囲まれ圧巻である。日本にもあのぐらい沢山あればいいのに。
大型連休のボケボケになった頭でその絵を見ればさらにぼやかすことができ、令和の時代はボケボケのぼやぼやで幕を開けることになり、とても平和になるのではなかろうか。


ロスコがあの絵を描いていた当時はまだまだ平和な時代ではなかっただろう。
平和な時代だからこそあの絵を見る価値があるわけで、ぼやけた中にこそ強いメッセージがある様に思える。


CITERAのロスコというボーダーTシャツには、世界を平和にできる様な強い想いや意思はないけれど、普通の作り方ではできないものを試行錯誤して何とか形にするというみんなの努力が詰まっている。
それはだたのTシャツとは違って、誇りを持って着ることができるTシャツということ。
「これを作るのは大変だった」や「こんなの作ったことなかった」など、関わったたくさんの人たちの誇らしい思いがあるからだ。

令和という時代もそんな誇らしげな気分を持って迎えることにしよう。ROTHKOを着てね。


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