STORY第16回はバックパックカバーについて。
梅雨の時季がやってきた。
世間での梅雨の評判は良くない。
梅雨になるとよく使われる言葉で「じめじめ」というものがあるが、これは見ているだけで不快感が高まる字面である。
大抵この言葉を発するときは、口角を下げながら憎らしそうに言う。
どんなに嫌われ、じめじめしていようとも梅雨は毎年やってきて、1ヶ月半程付き合わなければならない。
しかし、雨が無ければ人は困るので、ここでしっかりと降ってもらい、作物や水がめに十分に行き渡っていただきたい。
そして今年も梅雨がやってきた。
今回はCITERAにとって初の梅雨。
CITERAにも梅雨対策に貢献できるアイテムがいくつかあるので、その一つをここで触れておくことに。
それはバックパック用カバー。
一般的なカバーは無地というのがお決まりで、無地で主張が無いはずなのに「雨よけですよ!」と大声で言わんばかりの野暮ったい主張を頼んでもないのにしてくれる。
カバーは使いたいとは思うのだが、その主張のおかげで買いたいと思えないのである。
バックパックは背負われるその位置のため、傘を差していても必ず濡れる。
しかも、降り込んでくる雨と傘からしたたる雨水で倍以上濡れる。
日によっては水たまりができていることもある。
そんな時は「忌々しい雨め!」と雨に怒りをぶつけたくなり、やはりカバーが欲しくなる。
買いたいカバーが無い以上、買いたくなるものを作るしかない。
恐らく沢山売れやしないだろう。
だけど作る。
業者に最低ロット数を言われることも分かってはいるが、恐れず堂々と作る。
他に使いたいものが無いのだからそうするしかない。
さすがに雨が降っていない時に使う人はいないと思うが、晴れた日でも使いたいと思える様なものを作る。
しかも、日本の梅雨とは全く関係ない、マダガスカルの浜辺の風景がプリントされたバックカバー。
素敵じゃないか。
夏を待ち切れない気持ちを表しているかのようなその風景が、雨の街に点在する。
しかし、使ってみると一体何の柄なのか全く分からない。
それはまるで感情を表に出さずクールを装う都市生活者のようでいいじゃないか。
Paul Austerの小説によく出てくる都会に潜む孤独な変わり者が使っていそうで、嫌われ者の梅雨と相性が良いとさえ思えてくる。
そう考えれば考える程「一体誰が買うのだろう?」と不安になってくるが、使いたいものを作ることがCITERAの本質の一つである以上、嫌われていても毎年やって来る梅雨のように仕方の無いことなのである。