PRODUCT STORY

Entries by CITERA

 

夏になると白いシャツが着たくなる。というのはウソで、いつだって白いシャツは着たいと思っている。それもオックスフォードのボタンダウンシャツ。カジュアルでいながらもどこか優等生に見えると思っているからだろう。やっぱりそれってアイビーの影響なのだろうか?

考えてみれば、「アイビールック」が流行った頃にファッションを意識した世代でもないので、その影響ではないのかも知れないが、雑誌やテレビなどの中で無意識のうちにそのアイビー的なイメージを植え付けられていたのかも知れない。

アイビーだろうが無かろうがどっちでも良くて、オックスフォードのボタンダウンシャツがかわいく思えるのだから、夏になれば半袖のものを着るわけだ。今回のはセルビッチ出しをせず、シンプルなもので行ってみた。セルビッチ出しもかわいいのだけれど、かわい過ぎないものがいい時だってある。かわいければ何でもいい、というものではない。



 

実家で飼っているトイプードルはとてもかわいいが、かわいいせいで甘やかしが度を超えて「飼い犬に噛まれる」なんていう例え言葉の様なことが多々起きている。かわいければそれで良いわけではない。多少の賢さと従順さも併せ持っていて欲しい、とたまに覗きに行くよそ者は思う。こちらがそんな風に思っていることを察してか、どうも懐きがよくない。犬に飼われては駄目だ、こちらが主人として責任持った躾をするべきだ。と心の中で思いながら、何とか遊んでもらおうとお気に入りのぬいぐるみやボールを放ったり、ご褒美のおやつをあげたりと媚びを売っている。

媚びを売るというのとは違うのだが、海外に行くときは必ずシャツを持っていく様にしている。それは税関検査時の印象をよくするためだ。シャツを着ているのと着ていないのでは大きく違うらしい。税関検査員に媚びを売っているわけではないが、彼らの鋭い目を少しでも緩ませ、面倒な荷物チェックを避け、予定通りの滞在日数の許可を得たいのである。そうするために税関を通る際は必ずシャツを着るのだ。そもそも何も怪しい者でもないし、危険なものや持ち込んではいけないものなど持っていないのだが、せっかくパックした荷物全てを乱暴に引っ掻き回されたくはない。

散らかすだけ散らかして、「行ってよし!」となった後のこちらの何ともみっともない姿といったら。一人カウンターの端っこで荷物をまとめている様は、呑み会で調子良く酔っ払い素っ裸になった男が、酔いが覚め始めた頃隅っこでこっそりと服を着ているあのみっともないシーンと同様に思える。ああはなりたくはない。だからこそカバンにシャツを1枚そっと入れておくのである。




 

たまたま今メキシコに来ている。もちろん今回のメキシコ旅行にBD OXFORD S/Sを携帯している。メキシコの税関はとても厳しいと聞いており、日本の食べ物には特に目を光らせてもいるとのことで、今回は頼まれものの大量の日本からの食料があり、それを没収されずに切り抜けるにはこのシャツがどこまで効果を表すのかよい機会となった。結果は成功だ。もちろんカバンは全て開けさせられ、細かいことも聞かれたが執拗な質問や、自分が欲しいために無理矢理にイチャモンをつけて没収する、といったことは避けられたのだ。メキシコの税関検査員も信用ならないタイプがいるそうで、好みのものや金目のものに目をつけては没収してしまうのだそうだ。

もちろんそうなる手前で、見た目が怪しくない人物になりリスク回避をしておけば彼らの目も少しは緩くなるわけだ。手軽にできることはシャツを着ることである。

今回、海老のお菓子が入っていたのだが、今メキシコの税関員達に人気があるのは海老らしい。どうやら「海老がうまい」ということを覚えてしまったようだ。海老のお菓子を持たされ、しかも私を見つけてくださいと言わんばかりに、ご丁寧にパッケージに海老の画像までがプリントされているではないか!これは依頼主にはめられたのではないか?と勘ぐりをしてしまうほどだ。そんな海老事情を事前に聞いていたので、正直かなり緊張を伴う税関検査であった。


 

結果から言えば、検査員が海老のお菓子を手に取りジロジロとパッケージをよく見ながらもカバンに戻し「行ってよし」サインを出した。もちろん取られる危険がありそうなものはそれだけではなかったが、お咎めなしで無事検査を終えることができた。たまたまそうだったのか、こちらが考え過ぎだったのか、シャツが安全そうな男に見せてくれたのか、実際のところはわからないがシャツも一役かっていることには違いないだろう。

 

もっと厳しい国もあるだろう。その時はシャツだけでは済まないかも知れない。そうなればジャケット、ネクタイも必須であろう。これまで行った国の中では、ここメキシコの税関が一番しつこい検査ではあった。彼らは真面目に仕事をしているのか、それとも私腹を肥やしたいのか。

仮に私腹を肥やしたいのだとしたら、まずその彼らこそシャツを着ているのである。真面目な検査員とは見せかけばかりで、格好だけはキチッとしているのだ。そんな彼らにとっては、こちらの税関検査の時にだけシャツを着る浅はかな行為など見透かされているのではないだろうか、と心配になってくるのであった。


 

BACK TO INDEX