PRODUCT STORY

Entries by Naoki Ei, the Director/Designer of CITERA®

 

ボタンダウンシャツの形以前に、オックスフォードという生地が好き。オックスフォードなら何でもいい、というわけではない。凹凸がはっきりして、洗うと空気を含んでざっくりとした雰囲気が出るもの。つるんと綺麗な仕上がりなんてダメ。起毛して、糸と糸の間に空間があって、そこに空気が含まれふっくらと見えるくらいがいい。何度も洗っていくうちに、縫い箇所や生地が重なっているところが歪んで波打ち、聞かん坊の様な自己主張をし始める。パーソナリティのあるシャツに仕上がってくれば、しめたもの。そんなボタンダウンシャツが好きだ。




特に、衿や裾のフチなどのウネりなんてのがいい。カーブがある裾なんてのは、縫い込む時に負荷がかかって斜めにウネが走る。唐突だが「ウネる」っていう日本語の響きが少しねちっこくていい。湿度が高く、東の端っこに位置する小さな島国らしい陰湿な音が含まれている感じがとてもいい。「ウネる」と発する度、日本語の響きというのはとても面白いなぁ、といつも思う。それを言ったら「ウネる」だけではない。「ヌメり」とか「ダルい」とか。もっと意味わからないのは「いちゃいちゃ」とか。そもそも「いちゃ」ってなんだ?






そんな話の流れでオックスフォードの生地を表現するなら、「ぼこぼこ」した生地となるわけだけど、この日本語特有の2回続けるパターンは一体何なのだろう?さらにいえばこの「ぼこ」を「凹」とも書くけどこれは何だ?日本語を勉強する海外の人には本当に同情する。全くもって意味がわからないだろうに。こちらは意味なんて考える前に字面、使い方、音等身体に染み付いているから混乱しないけど、改めてこれだけ切り取ってみれば意味がわからないぞ。子供の頃から名前はよく知っているが一体何者か分からない、でお馴染みの金田一先生よ、教えてくれ!あんた字のプロ中のプロだろう?

すっかり話を脱線させてしまったが、言葉の細かいサウンドや形に気がいってしまう様に、ボタンダウンシャツの細かいところにもいちいち目がいってしまうのは今に始まったわけではない。若い頃から古着屋に行けば、全体の雰囲気がざっくりふっくらしたボタンダウンシャツを、着古されたシャツの中から探すと同時に、ボタンに文字は彫られているか、前立てはよく波打っているか、肩と袖の付け位置が互いによく噛み合いウネりを出しているか、などのチェックポイントを確認していたものだ。


どうしてそういうところに目が向く様になったのかは分からないが、コートやデニムはもちろんだが、ギターや車といったデザイン製品、そして通りにある工事現場の危険喚起のテープとか、消火栓といった街の細部にまで目が行くわけだから、生まれついてのディテール・シンドロームもしくはディテール・コンプレックスというやつなのだろう。

だからボタンダウンシャツを作るにあたっても、先にあげた様な点は当然で、さらに何かディテールを加えてCITERA®のシャツに仕上げるわけだが、ただでさえディテールがあるものなのに、さらに盛り込んでは嫌味ったらしく鬱陶しいものになってしまうので、注意しながら「盛り込んでそうだけど盛り込んでませんよ」という涼しい表情に仕上げていく。全く素直じゃない。だけど結果としてかわいかったり格好良かったりして、素敵なシャツに仕上がれば万事治まるのだ。


素直じゃないのは、本人の性格がそうだからどうしたって仕方がない。一見、素直じゃない様に思わせておいてこうしてちゃんと告白するのだから、結果的には素直じゃない?と自分では思う。こうして冷静になって文字を書きながら考えてみると、そんなヤツは素直か素直じゃないかの前にただただ面倒臭いヤツ、としか思えない。そう思うとすっかり凹むのである。

いくつになっても、そんなことをいちいち考えては気を落とし、殻に閉じ籠ってはシャツの汚れよりも「味のあるディテールがそこにあるのか?」と重箱の隅をつついている。


このシャツにおける重箱の隅をつついた様なディテールは、前立てとヨークに生地端のセルビッヂ使い、衿の小さいボタンにも入れた文字、裾のネーム、少しワイド目のパターンといったあたりだ。もっと分かりやすく派手なものを入れた方が人の目に留まりやすいのだろうが、CITERA®ではこのくらいがいい。あくまでも主役は着る人である。その人の横に静かに佇み、本人が普段より少しでも楽しくなれる手伝いをすることなのだから。これってとても日本人らしい振る舞いの様な気がしてならない。主張しすぎず控えめでいながら相手をたてる。

その反面、「いちゃいちゃ」とか「凸凹」といった訳のわからない表現を生み出す、そのアンバランスなところが、日本人としてとても誇らしく思える。




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