PRODUCT STORY

Entries by Naoki Ei, the Director/Designer of CITERA

 

こちらのTシャツ、「Lo」と付くことから分かるように、2月にリリースしたものよりも衿が1cm低い設定となっております。まぁそんなことは商品ページの説明に明記されているので今更ここで言うのも野暮ってものですが、一応繰り返し言っておこうかなと。

それで、この衿高のTシャツがよく売れるということで、4月に衿を低くしたバージョンとして投入したところ、これも無くなる勢いだったので急遽リピートを入れ、先日やっと納品されました。みなさまに気に入っていただけている様でとってもありがたく、本当に感謝しています。




 

生地がしっかりしててヘタらず、袖なんかはちょいと長めで絞ってあったりするもんだから見栄えがいい。「おい、お前さん、そいつはどこのTシャツだい?」なんつって聞かれたりするかどうかは分かりませんが、みなさんがこれを着てすれ違った人たちの中にもそう聞きたい人がおそらく居るのではなかろうかと。多分、これを購入された方も、もしこのTシャツのことを知らずどこかで誰かが着ているのを見たら、声は掛けずとも「何だいあのTシャツはぁ、一体どこのだい?」なんつって思ったに違いないでしょう。




 

だからこそ購入していただけたのではないか?なんて想像してみたりするわけです。本当のところは全くわからないですが……。実際に購入いただいた方が多数いるという事実は誠のことなので、皆さんとはどこか心が通じ合っているように感じてしまう、というのがこちらの実感なのです。とは言え、自分も消費者として買った物の作り手の考えについてなんて、あれやこれと考えたりしないので、こちらが一方的に一喜一憂しているだけの話ではあるのですが……。

買った物のデザインは当然だけど形、素材、ディテールなどを観察するのは昔から好きだったので、使う前にじっくり眺めたり、洗った後にその具合をさらに眺めてみたり、数回使って馴染み始めたか、など思いながらさらに眺めたり。とにかくしつこいくらいにジロジロと眺めてしまう。これはちょっとしたクセ、いやこれはもはやヘキなのだろう。そんなことを思って、もしかしたら自分にはストーカー的な危ない部分があるのでは?と不安になってしまう。物を見ている時は我を失い、物と自分だけしか存在しない世界に陥って非常に気分がいい。これは危ない傾向の様に思える。


 

それは置いといて。
生地感、縫い目のヨレ、ステッチの引きつりとか、品質表示が付いている箇所が少し盛り上がってるとか、生地のねじれやかすれ感など、ブラックホールに吸い込まれた様に物の細部に没頭してしまう。ふと我に返ればその時間は数秒なのか数時間なのか、はたまた時が止まっていたのか、あたかもそこに時間軸が存在していなかった様な感覚になる。まあ実際のところ長くても5分程度なんだろうけど、意識がどこかに行ってしまうのは確かである。

白いTシャツは使っているとどうしても汚れが気になってしまうが、昔から無地なら「混ぜるな危険!」系の漂白剤で、鬼のシゴキのごとく真っ白にできる。これは生地にはかなり良くない気がするが、このTシャツの生地くらいならそんなシゴキにも耐えてくれそうだ。

黒は黒で汚れに関しては洗ってさえいればさほど気にすることもないし、使って色褪せ始めの頃は気になるとしても、ある一定の色褪せを越えると諦めなのか、突如熟年カップルの様な関係性が生まれる時がくる。熟年カップルの関係が一体何なのか分からないのでこの例えには説得力はないけれど、着ては洗って洗っては着てと繰り返し、「第2の肌」と思えてくる程着てしまうことがある。


 

そんな風になれば、そのTシャツとは着倒すまでの長い付き合いになるだろう。このTシャツが皆さんにとってもそうであればいいのだが、まずその前に、自分にとってこのTシャツがそうであることを祈ろう。しかしそれはまだ旅の途中という感じである。Tシャツなんて極端なスタイルのものでもない限り、世の流行り廃りとは無縁なわけで、デニムやボタンダウンシャツなどと同様に生涯付き合える。そして使い込んで現れる「アジ」なんてのも加われば、愛すべきものとなる。

できれば、そういった具合で何年も着たり、同じものを買い替えたり、そんなスタイルがいいと思っているのです。それの究極ってスティーブ・ジョブズ?なんて思えるのだけど、あそこまで極端だと面白みがなくなってしまう。そもそも、毎日着るものを考えることを煩わしい、と思っていないし、洋服によって日々小さな喜びを感じたい、と思っているわけですし。やっぱり洋服というものは気分を上げてくれる魔法みたいな力を持っている。見た目の雰囲気、色、形、素材や着心地とか。


 

音楽が人を癒してくれるように、着るものだって癒してくれる。それも直接肌に触れているわけだから、人の身体にだけではなく心にだって大きく影響を与えてくれるはず。色で体温が変化するとか言われていますし。ただのTシャツにだって愛を持って接すれば、それが人生に小さくとも喜びを与えてくれるものである。僕はそう思っている。



 

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