PRODUCT STORY

Entries by Naoki Ei, the Director/Designer of CITERA

 

久しくカーゴパンツなんて穿いてないし、穿きたいと思ったけど穿きたい感じのもないし、という理由から作ったのが始まりなのだけど、2月にプレーンなタイプを販売したら驚くほど速く売り切れてしまったので、追加入れることになりまして。昨年の秋冬から出してるのでプレーンなタイプも少々飽きてきたなと。まあ飽きるほどもないくらいプレーンだからそのままずっとそれでもいいのだけど、やっぱり穿いてたらもっとオリジナリティがあるものが欲しいと思って。人間て欲深いなと。




しばらく前から何となくこの感じの画が頭の中にあって、カーゴが斜めで、サイドのデザインが切替えになってるともっと玄人っぽいかなぁ、と何となく思っていたわけで。玄人っぽいって何の?という感じだけど説明できない……。じゃあプレーンな方は素人なのか?と問われるとそうは思わないからより分からなくなる。でも「玄人っぽい」という例えが自分の中ではピタリとハマる。考えることもなく頭の中でこのIIの画と「玄人っぽい」というのがあったものだから説明なんてできない。






デザインにおいて「空間恐怖症」というのがあるのかないのか分からないけれど、ものすごくデザインを盛り込む人がいる。その反対に「空間推奨派」と思える人もいる。もちろん自分は後者の方である。代表的なところで言うと「Less but better」でお馴染みのディーター・ラムズとか。それを言うならブラウンのデザインでお馴染みのと書くのが本当は正しいのだろうけど。そんなことはいい。しかしだ、このカーゴパンツに関してはもう少し要素があった方がより格好良くなると思ったのだ。

一応言っておきますけど、デザイン界で「空間恐怖症」や「空間推奨派」なんて言い方しませんからね。勝手に思っているだけです。


プレーンな中に縦に切り替えのステッチと段差、そしてそこに螺旋状にうっすらと出る縫いジワが空間を埋めていくと、玄人っぽくなる。だから玄人っぽいってなによ?と自分でも思ってしまうが、悔しいけど語彙が貧しいためにそれしか表現がない。もう開き直ってしまうなら、より玄人っぽいのはオリーブよりも黒だ。オリーブもいいのだが、こっちのデザインなら黒の方がより玄人っぽい。暗い色の方がデザインのディテールがより分かりにくい。そこがいい!闇夜の街に潜む魔物たちのうごめきが目を凝らすことで見えてくる、街をいく人には見えないがオレには見える。玄人っぽいと言うのはそういうことだ。

と言っても、そんなに真っ黒な生地でもないし程よく光沢のある生地だから、しっかりとディテールは見えてるのだけどね。


真面目に言うならば、穿き込むと例の縫い箇所の螺旋状のアタリがオリーブよりもよりはっきり出て来てアジのあるカーゴになる、ということだ。例えるなら、結婚するなら黒、一晩の恋ならオリーブ。そんな使い分けというところだ。オリーブはもう売り切れてしまったので諦めるしかないのだが、黒はもうちょっとある。黒を穿き込み、より玄人っぽい人間として街に出るのだ。穿き込まなくてもいい、洗濯機に突っ込んで乱暴にガンガン洗って鍛えてやれ。


何ならこれ穿いて寝たっていい。先日うっかりこれ穿いたまま朝まで寝てしまったのだが、全く問題なかった。デリケートな人は寝た気がしないかもしれないが、私は大丈夫なタイプなのでエイジングのためにしばらくパジャマとして穿くのもいいかもしれない。シーツに擦れて普通に穿くよりも早くいい顔になるに違いない。

まあパジャマにするのはやり過ぎで「どうかしている」けど、そうやってデニムを育てる様に黒のカーゴを育てるなんてのもいい。今までカーゴをそんな目線で見たことなんてなかったから新鮮な気分。そういう付き合いができてこそカーゴが生きてくるのかもしれない。「オレはオマエを穿き潰してやる!」というマウント全開の気持ちで付き合うと、また洋服が楽しくなってくるというものだ。

どんなに高い洋服であっても、洋服なんて「着てやる」ものだ。とか言って、結構大切に扱うタイプです……。とにかく、このTHUNDERS CARGO IIも愛してあげてください。よろしくお願いします。




BACK TO INDEX