DIRECTOR’S JOURNAL

Entries by Naoki Ei, the Director/Designer of CITERA®

LFOM Vol.18

last friday of month 2020.11.27

今年も残り1ヶ月となりましたね。2020年は現代人にとってどんな意味を持つのか? もちろんこれまでたくさんの文明が生まれて滅びてを繰り返してきたのだろうけど、過去から続く今の文明は一体いつまで存続するのだろう?なんて考えてみたりするのだけど、そんな大袈裟なことでもないことはわかっている。とは言えなかなかタフな世の中になったもんですね。子供の頃は21世紀ってとても夢のある響きだったし、その世界に自分がいることさえも想像できなかった。いざ21世紀を迎えてみると案外21世紀は普通だった。もちろん科学や技術は進歩して便利になったけど、まだブレードランナーとか手塚治虫の描くああいったバリバリの未来感はないし、昔ほど未来に向けた希望感はあふれていない。人間は生きれば生きるほど生きるのが大変になってくる様に思う。だから結構疲れてきちゃっているというかネタ切れ感が出てきたというか。まあ何かを作り続けるって進めば進むほど難しくなっていくから仕方がないのかも。科学や技術と違って生身の人間はそう簡単に進化できないということが根本的な原因なのではないかと。でもそれでいいと思います。無理に進化したくないし、結局人間も自然の一部だから、進化したくても思った様にはいかないですからね。

便利になって選択肢も増え、医学も進歩し食べ物も十分にある(もちろんそうじゃない国や地域もある)から、結果として生きやすいし寿命も延びる。でも元々の人間のポテンシャルはそこに対応できていない様に思う。身体は元気だけど脳の調子が悪いとか、脳は機能しているけど身体が壊れてきたとか。そこに科学や医学の介入で壊れることもなく120年とか生きられちゃう世の中がくるのかどうか。昔は「未来は車が空を飛ぶ」とか機械・性能の話だったけど、人間の身体機能をどう上げられるかに話は変わってきた。薬とか機械を体内に埋め込むとか呑み込むとかなんだけど、結局それって人の幸せを求めてのことよりも、経済が行き止まりにならないための手法の内なのではないか?人が主体の世界だから、物が行き渡れば飽和する。そうなると物ではないもので経済を動かす。それが未知であればあるほど行き止まりは遠いから、車1台を売ることより、人の寿命を長くする方が商売として旨味がある様に思える。水が低いところに流れていくのと同じ様に、どんどんどんどん原始的な生活は無くなり現代社会が広がっていく。話を端折ると最終的には医学のおかげで人は死ななくなると減ることがないから、結局殺すことになる。それが他人の意思でなのか自分の意思でなのかはわからないけど、死なずに済む世の中が来ると場合によっては死を選ぶ、もしくは選ばされる、はたまた問答無用で死に至るか。

ウェアブランドの一コンテンツがこんないい加減な内容の「資本主義経済に蝕まれた人間の進化のその先」みたいな話をしていることの方が問題だ。大問題だ。ふざけてるのか大真面目なのか?ふざけてもないし大真面目でもない。ただなんとなく脳味噌がぐるぐる回ってこんな話を紡ぎ出している。もちろんそうなったのもこの「COVID-19」のせい。デマとかいい加減な話が親切心なのか正義感でなのかわからないけど今だに飛び交ったりしてる。それもまた「COVID-19」が運んできたもの。人の身体を媒介にして身体どころか精神の安全まで脅かしている。

まあ世の中を一つのドラマとしたらこういう事態がある方がストーリーは複雑で面白くなるから、21世紀感が高まるための演出なのではないか?とか思ってみたりもする。「ぜんっぜん面白くないっ!」って怒られそうだけど、そう考えた方が精神を病まずに足どり軽く生きられると思っています。

あぁ、今月もまたやっちゃった。僕の中の悪い虫をコントロールできずにここまできてしまった。原稿用紙4枚分も使って無駄なことを書き、本当のことを隠してしまう。素直じゃないし恥ずかしがりなのはわかっているけど、度が過ぎてると自分でも思う。「2020年はコロナのおかげで自分を見つめ直すきっかけができた」と考えることとして、2021年は素直に表現できる様に努めます。今年も残り少ないけど、ギリギリ年が変わる手前でそう思えてよかったです。年が変わるとCITERA®もシーズンが変わる訳で、世間のブランドは既に21春夏のルックを公開し始めていたりするし、直営店や卸先、受注会とかで現物や画像が見れたりして、気持ちはもう春夏になっていったりしますが、CITERA®の場合はそうもいかないので、ここでサンプルの一部をスクープ的にお見せしようと思います。










ベンチレーションのセットアップ。シンプルでありつつも大胆なベンチレーションを入れて、これまでの流れも感じられる様に仕上げてみました。








メッシュで内側が見えない様にしてあるし、だらしなく開いたりしない様にもしてあります。


ベイカーパンツは大きなバックポケットが特徴的でなかなかかわいい仕上がり。生地は春夏に合った薄くドライな質感なのに丈夫。




インディゴTシャツ。しっかりとした生地だけど上質な素材感でとてもいい。カーゴパンツに合わせて着たいと思っています。

立ち上がりは2月だからもう少し先だけど、今からこれらを着るのを楽しみにしています。













今月のサウンドはクリスマスに聴くアルバムをいくつか。 オーナメントのジャケットがとてもかわいいクレプスキュールのクリスマスコンピレーション。内容はクリスマスではないけどオルガンの音が暖かく聞こえるピーター・バラカンによる選曲のブルーノート音源コンピレーション。そしてやっぱりマスターピースはチャーリーブラウンのクリスマスアルバム。これがあればこんな時でも素敵なクリスマスシーズンが過ごせること間違いなし。耳に限ってですけどね……。

素敵な12月をお過ごしください!