TRIP REPORT

Entries by NAOKI EI

引き続き台湾の話を。9月の初頭と言うことでマンゴーシーズン滑り込みでマンゴーかき氷を期待して行ったのだが、ご存知の方も多いと思いますが、名店に行き並びも少なくラッキーなんて思ったのも束の間、現金不足で目の前でお預けを食らう。 写真と行列を向かいのコンビニから眺め退散。クレジットカードが使える他店では今シーズンのマンゴー商品はすでに終了し結局この旅でマンゴーを口にすることはできなかったのだ。その悔しさを埋めるためにドライマンゴーを買い、ヨーグルトに一晩漬け込みなんとか気持ちをおさめる。 暑さと現金不足のせいで焦りが出たせいか色々と気が回らず山の様に積み残しがあったが、ポケットの頼りない現金をどう使うかは慎重にならざるを得ない。そこでホテルの部屋でマンゴーヨーグルトを啜りながら「台湾といえば」を冷静に考える。 そうだまずは小籠包だ。

 

ジンディンロウならカードも使えるだろうが日本にも店はあるわけで面白くもない。どうせならヒヤヒヤしながら食べるほうが面白いだろうと、ローカルな店を攻めることに。 少し外れに位置するこの店は、白菜の冷菜が評判と言うことで行くことに。もちろん小籠包も評判ではあるがサブのメニューが良いというのは決め手になる。生の白菜のシャキシャキ感を楽しめる冷菜というのは日本ではあまり馴染みがない。 もちろんあるのだろうがやはり白菜は火を通しトロッとさせその甘味を楽しむことの方が圧倒的多数と思える。 歯応えを残した炒め物もあるが生というのはなかなか出会わないし、自宅でもやらない。


ということでこちらでは小籠包とそちらをいただく。ピーナッツや肉、その他野菜もあるがほぼ白菜で醤油ベースのドレッシングは、小籠包のうまみのある肉汁をさっぱりとさせシャキッとした食感が2品だけの食事にコントラストをつけてくれる。

 

小籠包の小宇宙に気を良くしながらも資金は減ることが気にかかり、次の狙いと兼ね合いは常に最優先の案件である。 まだ狙っている大物がある。 それはダックとチキンライスだ。 台湾なのだからルーローハンじゃないのか?と言われてしまいそうだが、なぜか知らないがルーローハンにはあまり興味がないのである。もちろん食べたことはない。おそらくスターアニスの香りが好きではないからだろう。 この歳になっての食わず嫌いも恥じるべきだが、何せ資金不足の身。 ここは何を削るかは慎重過ぎるくらいに慎重さが求められるところ。 カード付帯のキャッシングがあるのを知らないのか?とお思いの方もいるかもしれないが、ジャック・ニクラウスの英語アクセントの「出かける時は忘れずに!」でお馴染みのアメリカ系のあのカードにはそもそもその機能がついてないのである。

 

ということで、数百円で食べられるチキンライスを求め「梁記嘉義鶏肉飯」に向かうことを決める。 そこから近いダックの店は腹具合も見つつその後様子を伺ってみることに。チキンライスの店は人気ということもあるので少し遅めの時間を狙う。それでも10名くらい並びが出ているが、持ち帰りもあったり複数人などもいてお一人様のこちらが先に案内されるが、現地の熟年カップルとの相席。 ほぐしたチキンをご飯に乗せ目玉焼きという実に質素なスタイル。 これがうまいらしいということで来たが、まあ美味しいけど唸るほどでもない。イメージ通りの味。付け合わせのなんだかよくわからないさつま揚げみたいなのもまあ別に、といった味。どうやら期待を膨らませ過ぎた様だ。もちろん美味しいんです。 でも見た通りのシンプルで非常に日常的な味でそれもまたよしではある。恐らく、ルーローハンとかその他色々の甘め味濃いめのものが続いた後のこれ、なのであろう。 ともあれ、味も店の雰囲気も実にローカルに溶け込めたような気持ちになり楽しかった。

 

少なめの量と薄味に物足りなさを感じたのは、「ダックの店に行け!」という神の啓示に違いない。 その店までは10分も歩けば着きそうな距離。途中謎にお盆を持った女性と並走したり、マンホールで作業中のおじさん達がいたりとなかなか楽しい道のりで暑さも忘れ店に着く。

 

もちろん着いた時には流れる汗は止まらない。ここでも何組もの入店待ちが出ていた。 そんなことよりまずは支払いの確認だ。綺麗な店構えなのでもしかしてカード使えるかもと期待しつつも、当然使えないことも頭に残し確認したらカード使用可とのこと。早速ウェイティングのタブレットに入力を済ませ道端に置いてある椅子に腰をかけ待つことに。 ここでも10分程度で案内が回ってきてラッキー。 お一人様はこういう時に良い。 日本では鴨というとせいろか鍋であり、ローストというのは日常的に味わえない。そんなわけでローストダックは抑えておきたかったのだ。カードを使えるということで、これまで押し殺していた気持ちがときはなたれ、すでにチキンライスを完食しているにもかかわらず、ローストダック、青菜炒め、そして麺ものを注文。 食べ切れるのだろうか?ダックは持ち帰れるとしても麺の持ち帰りは無しだ。麺で腹を埋め尽くしダックを持ち帰るのは本末転倒だ。ここは完食を目指すしかない。カードを使えるのだからいいじゃないか。腹が裂けても完食しここでの贅沢を存分に楽しもうじゃないか。

 

まずはダックが給仕され、香ばしさが味覚を刺激し小気味よい程よい歯応えの後に甘い肉汁が押し寄せてくる。止まない波打ち際の様に箸が皿と口を往復。おおカモよありがとう、いやクレジット決済を導入してくれた店主よありがとうである。 どうやら飲み物はセルフで冷蔵庫から持ってくるスタイルの様であり、下戸の私はスプライトでダックを流し込み、呼吸とともに「あぁ幸せ」と言葉が発せられるほどの気分。気を良くしていると青菜炒めにうどん級の太さのヌードルが着丼。

 

止まらぬダックの潮騒で胃は満たされている。パッキングよろしくスキマに詰め込んでいくしかない。「汁は飲むなよ」と言い聞かせスルリと麺を食道に滑らせながら胃に落としていく。さながらスワット部隊がヘリからロープで降りてくる様である。 間髪入れずに青菜炒めを押し込んでいると、今の自分はフォアグラ量産のために身動きの取れぬダックに餌を流し込むような皮肉な事態であることに気づく。旅の恥はかき捨てとはいうが、捨てずに反省することにしたい。 この破裂しそうなほどの満腹感がおさまったとしても、欲に任せて注文するなんてことはもうしないと、食い散らかしたテーブルを眺めながら、台湾という地で誓うのである。

 

スマホでホテルまでの距離を見るとそこそこある。夜とはいえ十分に暑い。この腹を落ちつかせるためと自分への戒めとして歩いて帰ることに。なかなかの距離を歩いたことで翌朝、お腹の具合も普段と同じで普通に腹も減る。今朝こそはシェントウジャンをいただくのだ。お目当ての人気のお店はあいにく定休日。

 

ホテルから比較的近い初日に行った店にリベンジ。シェントウジャンとダンピンはいくつか食べておきたいこともあり、ハシゴすることに。そこから歩いていけるであろう場所にある店をマークしていたのでそこまで朝とはいえ暑い中を20分ほど歩く。

 

どちらの店も大きな差もなくダンピンともに安定して美味しい。数百円でこれらが気軽に毎日食べられたらどんなにいいだろうか。

 

歩いていると、東京で言ったらラフォーレ原宿の様な佇まいのビルの下で朝ごはんを売るおばちゃんに出会う。こういった風景は当たり前の様で、そこここで見られる。見た目は近代都市化したとはいえまだまだ牧歌的光景が残っているのは羨ましい。 同じアジアであっても屋台文化が今も残る国、失われた国その違いはなんであるかを考え、汗を流しながら歩く。

 

その答えなど出るわけもなく、湿気でモヤがかかりそうな頭をなんとか支えていると、オーギョーチーの屋台にたどり着く。そうだこいつを忘れていた。ポケットのなけなしの小銭でおっちゃんに注文。この丸出しの屋台感がたまらない。

 

柑橘系の爽やかでうっすら甘く冷たい汁と共に喉を滑っていくゼリー上の半固形物体がなんとも心地よい。滑り落ちた反動で鼻にその香りが抜けていくのがわかる。とても繊細な食感と香り、それでいて猛烈なクールダウンを誘うその不思議さ。

 

これがあるのならこの暑さの中でも生きていける。現金はないがまだやり残したことがある。その分のエネルギーは今ここで補給できた。屋台のおっちゃんに感謝を伝え、デパートで食材を物色し持って帰れそうなものを適当に買い込み、ホテルで荷物をピックアップし空港へ向かう。

 

人気の洒落たヌガークッキー、マンゴーかき氷その他あげればキリがないほどの積み残しがありながらも、最後のオーギョーチー体験はとても良い想い出となり、3時間ほどでこの地に来れるのであればまたすぐにでも来よう。 オーギョーチーのためだけに来てもいいとさえ思える。それはあの簡素な古めいた昔から続く屋台とそのおっちゃんのオーラが強烈だったからであろう。

 


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