韓国、ソウルへの旅。25年ほど前にロンドンへ行く際の乗換で金浦空港に降りたことがある。その時はただ空港で座っていただけだ。初めてのロンドン長期滞在への期待と不安で韓国どころではなかった。今思えば空港内だけでもちゃんと見ておけばよかった。後悔なんてなんの役にも立たないもんだ、と思いながら入国審査の列に並んでいるとスムーズにイミグレーションを通過。パスポートの写真は髪が長かったため、審査員は眉間に皺を寄せながらしつこく見比べていたが、何も怪しまれることもなく晴れて韓国ソウルの地を踏むことができた。
早速UBERでホテルを目指す。時間は午後3時頃。高速道路はすでに渋滞、運転手は尋常ではない車線変更を繰り返し前に進もうとする。パッチワークキルトでも作るのか?と思うほどに車の間を縫い針の様に激しく動き、後部座席の我らは最悪の状態。酔わない様に遠く外を見るのが精一杯だが、目に入る景色は素っ気無い画一的な建物が続き酔いを煽る様にいつまでも続く。機内食をフルーツだけのものに変更して正解だった。普通の食事だったら車内にそれをぶちまけていたかも知れず、不幸中の幸であった。
しかしみなさん、機内食オプションの「フルーツプラッター」を試したことはおありだろうか?サラダ、小鉢、主食、メイン、デザートとご丁寧に分けてあるのだが、それがおかしくて仕方がない。運営上仕方ないのだろうけど、もうちょっと給仕の仕方があるのではないだろうか?いつもこれを見たくてついフルーツプラッターを事前に頼んでは楽しみにしている。無料なのでお試しください。「狭い機内に詰め込まれ高カロリーの機内食を食べている様は、フォアグラ生産の様な光景である」と誰かが書いているのを読んでから、できる限り機内食は軽いものしか口にしないようにしている。旅先についてからその地のものをすぐにでも食べたい、という食いしん坊根性もあるのだろう。
今回はソウルのみなのでそれ以外の街は分からないが、街の第一印象はアメリカの都市の様な姿。車線が多く、建物も欧米的モダン建築といえば聞こえはいいが、効率的な作りを優先しつつもデザインで誤魔化した感じの外観が立ち並ぶ。統一感はあるので見ていてとても爽快であった。
今回の旅は、ソンス、カンナム、アックジョン、シンサドン、イテウォン、ヨイドと、どこもこの10年ほどで新しい波が流れ込み、若い人たちがカフェやファッションを謳歌できる様な街であり、勢い的には20年ほど前の東京の勢いに似たものがあった。若いブランドがビルを建て、高級街にお店を出したり、どれも洗練されたスタイルでどこに行ってもオシャレな風が吹いていた。こうやってどこの街も画一化されその国の昔からある良さが失われつまらないものになっていくのだな、と残念に思う面もあったが今更もうそんなことに嘆いている時代ではない。この進化する勢いを味わうしかない。その急速なスピードの中でも必ず残るその国の魂の様な断片とのコントラストが面白くもある。それをじっくり味わう旅となった。
とても面白いのは、ファッションストリートに並ぶ店舗の間に街工場があったりすること。車の整備工場の横に若い女性が群がるカフェがあったりするのもとても面白い。古い工場をリノベーションした内外装がとてもかっこいい。オシャレと思える場所にいる人の9割が女性であることもこの国の面白いところであった。男子の勢いはイマイチであった。韓国スターがしてそうな流行りの格好をしていても、色気づいた中学生野球部の様にどうも垢抜けないルックス。それが可愛くもあるが、この国の伸びしろはそのあたりに現れているのかも。
トレンドタウン梨泰院のオシャレ爆心地にある古いサムギョプサル店に入れば、パーマヘアーで一見怖そうだが、話しかけると人懐っこい笑顔で微笑んでくれるおばちゃんがいたりして、そのコントラストというのか振り幅というのか、とても不思議な雰囲気を感じられて面白いのだ。
どの店に入っても必ずキムチが出てくるし、それだけではなくその他惣菜なども出てきたりして食いしん坊にとっては楽しくて仕方がない。キムチをハサミで自分で切ることもこの国らしさを感じられた旅のディテール。周りを見て自分の切り方がいかに素人であるかを痛感させられるのも旅の思い出となる。
オシャレとそれとは無縁のものが同居する街。それは発展途上だからなのか、それともあえてそれを貫いているのかは分からないが、その混ざり合った感じがヤケに洒落て見えてくる。作りたくても作れないオリジナルなもの。建物のレンガや手すりの色などが、隣の新しいミニマルな外観と相まってよく見えてくる。そういった景色が多く見られたことがとても刺激になった様に思う。オシャレに飲み込まれながらもそれに負けないオーラを放ち続けているその街の魂の断片。
引き続き次回も韓国ソウル編になりますが、次回はより具体的な内容をお届けしますのでお楽しみに。