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Entries by CITERA


正直バスタオルというものにこだわりを持ったことはない。なんとなくアメリカの有名ウェアブランドのものとか、国内のアメニティものに特化したブランドとかを使ってもみたけれど、良さがよくわからない。というか、バスタオルにそこまで何かを求めていなかったのかもしれない。結局、濡れた身体を拭くだけのもの、という乱暴な目線を常に向けてきたのだと思う。バスタオルは大きい上に両面パイルなのでボリュームもある。洗濯に向かないというか、乾くまでの時間や量が増えてしまうという生活感のある話なのだが、日々暮らしている中では割とそこは重要である。こういったことは家事を担当する立場の人なら納得かと思うが、私は諸事情あって小学生の頃から炊事洗濯などをよくやった方だ。その経験上、洗濯というのが一番手間が掛かる様に思う。洗う、干す、畳む、しまう。一人分ならまだマシだが、家族がいればいるほどその量は増える。まあ慣れて習慣化しルーティーンとなれば大して苦でもないが、それでも一仕事という感じだ。

その中で、タオルやフード付きスウェットなんてのは最も乾きにくいものであり場所もとる。そんな厄介なものなのだ。ということもあり、長いこと我が家のバスタオルは肉付きの良いフェイスタオルをバスタオル代わりにし、定期的に入れ替えながら使い続けていた。小さいので場所も取らず、捨てる際もバスタオルほど嵩張らないのでとてもいい。何より洗濯の取り回しの都合がいい。身体に巻き付けたりはできないが、拭きあげるだけならフェイスタオルでも十分である。だいたい30cm x 50cmくらいの大きさだろう、と思っていたので今ちゃんと測ってみたところ、31cm x 80cmもあった(笑)。思っていた以上に大きかったが、バスタオルと比べるとかなり小さく感じる。





その昔とある衣料ブランドで働いていた時に共に働いていた仲間から、アメニティ系のブランドを始めると連絡をもらった。定期的に連絡は取り合っていたので信用のできる男である。これが何年も連絡を取り合ってもない者からのそんな連絡であれば話を聞かなかったかもしれない。何せフェイスタオルで事足りる家の者なのだから。バスタオルを使うのは悪しき習慣、とまでは思わずともコンパクトに生活したい者にとってはちょっと大袈裟かなと思っているくらいなのだから。まあそんなことはその男には一言も言わず、バスタオルの話を聞いた。





その男はとあるブランドで生産管理をしていた。と言っても小さい会社だったので糸から細かい付属類、そして縫製工場まで全て製品が作られる全ての段階を担っていた。無理難題も多くあったがその都度頭を抱えながらも、星一徹さながらの鬼のノックを全て拾い上げていた男だ。私も違う担当ではあったが同じ様にその鬼からノックを受けていたので、その男に対して強い仲間意識がある。私は先にドロップアウトをしたのでその男の方が何十倍も忍耐力と腕はあるだろう。あの鬼のノックを長年受けていたことを思うと尊敬する以外ない。精神と靴底をどんなにスリ減らしたことだろう。






そんな男が作るタオルが悪いわけがない。いいに決まっている。その男が作るタオルを前に、洗濯の手間がどうのなんて言っているのが恥ずかしくなるほどだ。とにかくその男は綿に関して恐ろしい程の知識がある。今でこそ海島綿とかギザとか普通に見聞きするが、私たちが机を並べていた頃はほとんどそれらの高級綿について一般的には広まっていなかったと思う。その頃からそういった紡績業者や綿系の協会などに出入りし知識を培っていたのである。一般的に知られている海島綿などは綿花の長い超長綿と言われるもので、長いことにより滑らかな質感と光沢を持ち高級とされている。





タオルの場合、闇雲にそれらの高級綿がいいのか、というわけではないとその男は言う。そして男は続けた。タオルの第一の目的は水をよく吸うことである、と。目的を持ってものを作る者は本質を理解している。その上で、手触りや拭き心地といった質感にもこだわるその男のタオルなら使ってみたいと思った。そして誰よりも先にCITERAと名を入れさせてもらった。もちろん、より良い拭き上げや水の吸い込みのために綿自体だけでなく構造にもこだわっている。両サイドの波型はそのためなのだそうで、これによって表面積が増え吸い上げがより良くなるのだ。





商品説明では国産としか書いていないが、タオルの産地今治の工場で作られたものである。その男はあえて今治産を謳うあの有名な織ネームは付けないことを選んだ。その男からすれば、あの織ネームが悪いわけではないが、誰でも付けられるものをつけても意味はないのだとか。今治と謳いながらもネームと値段だけで粗悪品は溢れているのだとか。どの時代にもどの業者にもそういった商売の仕方をするものはいるもので、そこを責めたり追求する気はないが、本当に良いものを見極めその良さを知ることこそに意味がある、とその男同様に私も思う。バスタオルという用途だけではなく、水辺の敷物や車に常備、昼寝のタオルケット代わりなど、その質感の良さをあらゆる場面で楽しむのも自由である。バスタオルだから身体を拭くのみというのでは勿体無い。それぞれの生活にあった使い方をしていただきたい。

そして、同じ様にバスタオルは大袈裟だな、と思っていながら大判のタオルを使っている方、勇気を持ってそれらを捨てて今すぐフェイスタオルをごっそり買いに走ることをお勧めします。










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