今年の冬は暖冬だそうで。だからといって、気温が20℃の日があるとかそういったわけではないだろう。ただこれまでの平均気温に比べると高い傾向にあるだろう、という現段階での予測なわけで冬なのに恐ろしく暖かい日々がやってくるということはない。そもそも、人の季節ごとの気温の感覚なんて全く当てにならない。毎年シーズンごとに「去年ってこんなに暑かったっけ?寒かったっけ?」と耳にすることが多い。耳にするどころか、自分でも全くそう思うのである。
去年の体感的気温のことなど全く覚えていないのだ。そこで「今年は暖冬です」と言われても冬は冬であるわけで、14、5℃を下回れば肌寒いし、10度前後であれば冷え込んだ気温となり暖房なりストーブなりで部屋を暖めないと身体の末端が冷たくなってしまうものだ。いつだって思う。天気予報の存在はありがたいが、そこにいちいち気持ち、生活習慣を左右されたくなんてない。朝のテレビの占いコーナー程度の存在でとどめておく自分なりの努力が必要になる。しかし、地球の気候変動というものは事実であって、日本も亜熱帯気候になりつつあるようだ。だったら冬も15℃を下回らない、とかだとありがたいのだが……。それはそれで問題なのだけど、寒さという点だけでいえば、寒くない方がありがたいわけなのだ。
大昔の人、石器時代とか極端に大昔の人のこと思うと本当にご苦労だっただろう。実際動物の皮をワンショルダーで衣服の原型の様な形で着ていたかは定かではないが、限りなく裸に近い状態で寒さを凌いでいたことは想像できる。そうなれば寒さで冬を越せない人もいたことだろう。それに比べれば現代人なんて天国にいる様なものだ。寒冷地ともなれば話は別だが、都市部であればどうにでもなる。ましてや、さまざまな機能的アウターが存在し、さらにはレイヤリングで調整しつつ寒い冬であっても快適さを確保できるわけである。
できるだけ重ね着をしたくない人は、極端な場合Tシャツ(長袖半袖問わず)にダウンやボア系、また中綿衣料でというスタイルで過ごす人もいるだろう。電車によく乗るということで着膨れを避けたい人は、衣服内の保温性を高めるためのレイヤリングスタイルをとるだろう。そもそも寒がらない人は、単に薄着で良いわけで。とにかく人それぞれの先天的な体感による感覚で冬を過ごすスタイルは決まるのだろう。
CITERAとしては、どちらかといえば知的なスタイルというか、都会的なスタイルと言った方が良いわけで、方向性としてはやはりレイヤリングを推奨するべきであろう。Tシャツにスウェットやニット、そしてライトウェイトのインサレーションに、防風、撥水が施されたシェルになるアウター。さらにアクセサリー的にグローブやマフラーを追加し、外気に晒さないようにする。一日中外でとなれば別だが、室内勤務の仕事についているのであれば、30分も外で吹きさらしに遭うこともなさそうなので、外以外では上着を脱ぎ身軽な格好で過ごせるのが今の世の中。
問題は外での時間である。たとえ駅までの10分の道のりであったとしても、寒さが厳しければ体感としてはかなりきつい。そして吹きつける風があればあるほど泣けてくる。臀部や大腿部辺りの装備は案外ゆるい。何せコートを着る以外はパンツとその下に穿くアンダーウェアのみなのだから。そう思うと冬にコートを着るということはとても重要に思えてくる。丈が長いとどうしても億劫に感じ避けがちだ。電車や車を使う人にとってコートの丈は頭を抱える存在でもある。頭を抱えるは言い過ぎだが、コートの上にドンと乗っかるのはやはり気になる。シワや跡をつけるのはどうも忍びないからだ。
しかし、そんなことを言っているようでは寒さには勝てない。臀部や大腿部を守ってこそ体感的保温性は維持される。マフラーを巻くだけで1枚分の着衣に相当する、などとよく言われるが、臀部、大腿部を守ることもそれ相当の効果があると思う。丈の長い上着を着る度に「あ、やっぱり冬はコート着た方がいいな」と素直に思うからだ。ただなんとなく生地面積が多いことで面倒に思え敬遠しがちだ。今年は暖冬ということを考えると、重衣料を着ることよりも軽めのアウターで必要な防御をもって足取り軽く快適に過ごすことを考えるべきなのかもしれない。
そして一つ忘れていたことがある、真冬に降る雨の存在。これがまた最悪である。寒い上に濡れるとなれば絶望的。傘を持つ手はかじかみ、水たまりや滑りやすい道路や階段などを寒さで強張る身体を引きずりながら歩くとなれば、気を張って神経共にすり減らす。どんなに時代が進んだ現代でも、未だ人はその様に気候に振り回され、こんな単純な理由に辛い思いをさせられている。そう思うと、人の存在などは自然の前ではとても小さなものだと思い知らされる。自然を相手にすると全く歯が立たない。時代が進み技術は進歩しても未だ「寒さ」という最も原始的な要素に勝てないでいるのだ。もちろん歯向かうつもりなどない。しかし、もうそろそろそんな辛い思いから解放させてくれてもいいのでは?と神様に言いたくもなる。そんなことを神に祈らなくてもいい様にそのための衣服なのだが、寒いと思う気持ちと体感は、いつまで経ってもどれだけ快適なものを身に纏っても拭えないのである。
日本に生まれたからには避けられないことがある。四季と対峙しなければならない。春と秋は問題ないが暑さと寒さが問題だ。CITERAでも丈の長いものから短いもの、重衣料から軽衣料まであるがそれらを駆使し、この2023年の冬に備えて欲しいと思っています。それぞれにあった寒期のスタイルで素敵な冬をお過ごしください。