キャップを被るのであれば、できるだけスポーツや趣味的な雰囲気ではないものがいい。その原点は、LとVが重なったモノグラムで有名な、あの高級ブランドがキャップを出していることを知った時だ。1988、9年頃だっただろうか、とにかくまだ1990年になる前である。アメリカのある有名なプロスケーターが、被っていたのをスケート専門雑誌かビデオのどちらかで見て知ったのだ。そして、Gが向かい合ったモノグラムでお馴染みの高級ブランド、そこからもキャップが出ていたことを知ったのも同じ頃だった。
80年代のアメリカのHIP-HOPアーティストたちは、成功の証として高級ブランドの中から、自分達のスタイルに合うものをチョイスしており、モノグラム柄のウェストポーチやトラックスーツ、そしてキャップなどを好んで身につけていた。スケートボーダーもそういったHIP-HOPの影響からファッション的な意味で、高級ブランドのキャップやウェストポーチといったアクセサリー的アイテムを身につける様になったのだろう。
その頃、まだ日本ではスケートボードと言えばパンクス的なスタイルの方が主流だったこともあり、高級ブランドのアイテムを身につけてスケートボードをすることがとても新鮮で格好良く思え、衝撃を受けたものだ。
当時、日本でLとVが重なった、また向かい合ったGのブランドでキャップが販売されていたのかは不明だが、仮にあったとしても中学生には買えるわけもなく、悶々としながらもニューヨークヤンキースのベースボールキャップでなんとか欲求を抑えていたのであった。都会でも試合のある日に球場の周辺を歩いていれば、キャップ姿の大人たちに多く遭遇する。さすがに普段から応援しているチームのキャップを被ることはないと思う、ここ日本では。特にそれを被って仕事に行くなんてことはまずあり得ない。全くいないということはないだろうが、出会った経験が一度もないのでそういうことだろう。
そんな流れもあり、キャップを作るならリッチな仕上がりのキャップがいい。そんなキャップであれば、大人であっても都会で堂々と被り、仕事先にもそれを被って行ってしまえるだろう。洗練された洒落た大人の雰囲気を纏い、誇らしげな気分ですらある。シンプルで高級感のある仕上がりのキャップは、洗練された都会的な大人のマストアイテムであり、そこら辺のものとはまるで違って見える。当時「スタイルマスター」と呼ばれたストリートスケーター、トミー・ゲレロがそう見えた様に。
キャップスタイルがよりシックに見えるために、メッシュは使わず6パネルの全てをヌバック仕様にすることで、周りの光を吸い込むほどに落ち着きを放ち、キャップというラフなアイテムでも上品な男の子を演出してくれるのである。さらに、コバ塗りされたヌバックのアジャスターベルト、刻印の入ったアジャスター、同色の刺繍、裏地、内側帯部のパイル素材などディテール出しや機能面もしっかりと行うことも、品あるアイテムにする重要な要素でもある。
キャップというのは手軽な存在でありがたく、朝早く髪型に手が回らないときなどいつも頼りっきりである。その様に、被った理由がその場しのぎだったとしても、その辺においてあるヨレヨレの適当なキャップであれば、寝癖で出てきたのと大して変わりはしない。セットする時間がなく被ってきたな、と一目瞭然だ。例えそうであったとしても、しっかりと意志が伝わるほどのキャップを被れば
キャップの下に寝癖が隠れていたとしても、それを相手に悟られたりはしないだろう。
そんな時相手は、「いいキャップ被っていますね」などと言ってくるに違いない。「いやいや、お恥ずかしい話、寝癖を整える時間がなかったもので、これで隠してきたんですよ。はっはっはw」と正直に答えたとしても、ダラしないと見せかけながらもスタイルには手を抜かず、そしてそれを謙遜で隠し嫌味を感じさせずに洒落者の余裕をかましてくる強者、と相手は勝手にイメージを抱きさえするであろう。このキャップにはそういう、一種の魔法の様なエネルギーが内包されているのである。こちらとしては、実際に作る上でそこまで見越して作るのだから、そうでないと困るのだ。
などと冗談半分で大袈裟に言ってはみたものの、そんな意識はしていなかったがあながち違うとも言い切れない自分がいる。そんな戯言は後からいくらでも言えるわけだが、付け足した割にすんなりと入ってきてしまう様にも思える。もしかしたら、このNEU CAPには本当にそういった呪いじみたエネルギーがあるのかもしれない。それは実際に被ってみた者にしかわからないことである。５月の日差しは最も紫外線が強いとも言われている。その紫外線を跳ね除けるためにもキャップは日々必要であり、いくつか用意しておきたいところ。その一つにCITERA NEU CAPを仲間入りさせるのはどうだろうか？
