葉山の海辺のハウススタジオまで足を伸ばし、海から吹く潮風と水面に反射する光を受けながら行った撮影企画「WINTER OUTFIT/冬の装い」。ドライブついでに、と言いたくなるほどの最高のロケーションと天気に恵まれ、仕事であることも忘れその気持ち良い冬の一日を、その地に流れる独特の時間の中で写真に切り取り、一連のスタイリング写真でお届けしてきました。
「海に来るつもりではなかったのに、当ても無く車を走らせてたらなんとなく海に行き着いてしまった」という現実的にはありそうにない想定ですが、当初は山に行って撮影するつもりでした。長野県のある場所までロケハンに行ってみたのだけれど「なんか違うね」となり、そのまま長野でのんびりと大人の遠足の様な日を過ごし、その後「海にでも行ってみる?」という当初想定していなかった山とは逆の海で撮るということになり、葉山で撮影することになりました。そういったわけで、WINTER OUTFITのサブタイトルである「海に行くつもりじゃなかった」を付けることにしました。
ファッションシューティングではあるのですが、ブランドの方向性上、ファッション的観点で切り取るのはどこか違和感があり、日々の生活の中で自然と入り込めるメルマガとしての機能を持たせたい。あてもなく、または何となくどこかへ行ってみたい、そんな気分を想起できるものになれば、という思いがあり撮影までに至る気分や、その場の空気感をメルマガによってどれだけ伝えられるかは不明ではありますが、画像に写るCITERAのアイテムを通し「気持ちよく流れる海辺でのゆったりとした時間」を伝えるためのコミュニケーションツールとして機能するメルマガだったのではないかと思います
今回の企画では、スタイリストは梶雄太さん、写真はフォトグラファーの本間加恵さんにお願いしました。スタイリストの梶さんはふざけた話を真顔でできる貴重な友人です。本間さんとは、以前ヨーロッパの某シューズブランドの撮影でご一緒したことがきっかけで、今回声をかけさせてもらいました。その時のスタイリストも梶さんです。彼女はロンドンへ拠点を移すまさに旅立つ寸前だったので、今抱えている未来への期待感が撮影に影響すれば面白いのでは?と思いお願いさせていただきました。そのせいか、写真の色がとてもフレッシュに写って見えてきます。
梶さんにスタイリングをお願いする際、打ち合わせしてもほとんどが他愛もない話ばかりで打ち合わせの「う」の字もない感じで、取り立ててこちらからのリクエストみたいなものもほぼ出さずとも、普段通りの友人同士の会話の中からこちらの意図を汲み取り、CITERAというブランドの雰囲気を本間さんの写真の中でどう伝えるかを考え、スタイリングを組み立ててくれています。
打ち合わせの時、梶さんから「車を使えたらストーリー性が出ていいよね」という提案があり、そこからそれぞれが欲しい車の話へと脱線していき、本間さんがレンジローバーのイヴォークを買おうか考えているという話からイヴォークの話が続き、たまたま所有している友人がいたので彼に借りて撮影に使うことにしました。流行りのSUVタイプではあるけれど、コンパクトで洗練されたスタイルが今回の撮影にちょうど良く、写真にインパクトをもたらしてくれています。
その場の思いつきから出たそれぞれが放ったキーワードの中で、使えそうなものを拾い集め形にしていったことを思うと、これはジャムセッションの様な撮影で、それぞれの個性がCITERAというブランドを中心に融合した面白い企画であった様に思います。
とはいえ、やはりその中でも柱となっているのはアイテムであり、梶さんが組み上げたスタイリングでもある。今回のスタイリングに関して梶さんに聞くと、「CITERAの服作りは車や工業製品といったプロダクト同様にとまとまりがある。ブランドの雰囲気を伝えるにはまとまりのあるコーディネートで組み上げるのが一番格好いい」という説得力のある言葉が聞こえてきた。
華やかなファッションとは違い、日常の中でささやかながらも自分を後押しするためのディテールとして機能してくれる服。他人からは何でもない様に見えるかもしれないが、自分にとってはとても大きな要素であり、それが心を躍らせポジティブな日常を維持してくれる。このメルマガと共に1月も終わりを迎え、2月になれば新しいシーズンが始まります。新しいシーズンも日常のディテールとして機能し、それぞれの生活の中で活躍できるものであると信じています。もうすぐ始まる新しいシーズンでのメルマガもお楽しみください。