ベーシックスタイルのカジュアルパンツをユニークなウェストベルトにしています。ウェストのバックサイドは伸縮性があってリラックスして穿ける仕様にしてある。実はフロントのベルトを完全に外して両サイドに垂らして穿いてみてもいいと思っている。思っているどころか、デザインした本人は実際にそうして穿いている。よく分からないけどなんだか面白いと思ったので。全く不思議でもエキセントリックでもないけれど、どこか世間をはみ出している気分になる。それは穿いている本人しか思っていないから、誰も不快にならないからいいこと。
時に、ファッションというものは見る人を不快にするものである。それを狙ってそうしている人もいれば、全く気付かずにそうしていることもある。乱れたり、攻撃的な服装で世間に反抗的でいる態度を表現したり、セクシーさを求めて過度な露出をしたり。色々である。本来「ファッション」というものは自由でいいのでそこに誰も文句は言えないのであるが、「社会的」視点から見た時にそれらは眉をひそめたくなる存在なのであろう。
それをよく表す言葉は「大人は分かってくれない」というやつだ。分かってくれないから反抗的になるのか、そもそも「分かって欲しくない」、いや、「分かられてたまるか」、または、「お前ら大人には到底わかるまい」ということなのか。若いということは非常に分からないことである。恐らくそれは、彼らが歳をとった側よりも可能性を秘めているからこそ予測がつかないのであって、それどころかこちらの想像力が追いつかないくらいの可能性があるから、だから分からないのだと思う。そうなれば、こっちだってお前ら若いもんのことなんて分かってたまるか!である。こちとら反抗的な大人なのだ。思春期なんてそんなめんどくさいものなんてもういらないし、仮にお金を積まれたとしてももういらないくらいである。
大人の方が楽しいと思っている。正確に言えば、「大人になった」とは心の底から思っていないので、「年齢的には大人だけれど、精神的には子供のまま」は楽しいのである。思春期の安定しないメンタル具合もなく、社会的通念を持っていますよ的なすまし顔をしていれば、誰に何を注意されることもないのだから、本当に気楽なものだ。もちろん面倒なことはあるけれど、あのコントロールできない心のアップダウンよりはマシ。さらに反抗的な外見をしたいとも思わないですしね。見たところ棘のないバラ、の様な感じとでも言いましょうか。でも不用意に触られたりすると、相手の背中にそっと刺したりしますからね。暴力的なことは一切しませんが、気付かれないように精神的に相手を弱らせてやろう、そんな知能戦でいくのが大人子供です。
だからこのパンツで例えるなら、一見ベルトしてる風だけど、全然ベルトの意味を成してない(もちろん閉められるので成してはいますが)みたいなもの。なんなら外してだら~んと垂れさせてみたとしても、誰にも言われるほどのことでもない。そんなパンツです。ということを、いちいち考えて作った訳ではありませんが、このパンツ一つでいくらでも想像を膨らませて楽しむことのできる余白と要素があるパンツということです。でも普通っていうところがCITERAっぽい。
コットンかと思いきや、ポリエステルが7割程(67%)なので丈夫だしコットンなんかよりも乾きが早い。乾燥しているとはいえ冬場は洗濯物が乾きづらいですからね。伸縮性のウェストが気になるおなか周りのお肉の増加にも対応できますし。シルエットもすっきりとテーパードの細めのチノパンという印象。
すごく静かで物腰も柔らかく行儀もよくて安心できる隣人、そう思っていたら実は家の中では爆弾作ってる。でもその爆弾は特に使うあてもなくただ爆弾作るのが好き、というすごく変な人。そういう人に若い頃は憧れていました。もちろんそんな危険なことはしませんし、する度胸もありませんが、常識的に見えつつも実は非常識な側でできている様な人物像に惹かれてしまう。
それとこれとは全く関係はないのですが、このパンツを見ていると、根本的な部分での自分の癖、みたいなものが影響しているのではないか?と思えてきました。
綺麗なものだけでは世の中は成り立たないわけで、その反対側にあるものも世界はどうしたって同じだけ内胞している訳です。だからこそ飽きないといいますか。若いということはまだ未成熟であって不安定な要素だらけだけれど、可能性に満ちているだから美しい。もちろん自分はもう若い時に戻りたいとは思いませんが、見ていてとても美しく思います。そういう意味では若いって素晴らしいと思います。でもそれと同じ様に歳を重ねるのも素晴らしいと思います。そう思いながらベルトを垂らして穿けるこのパンツはなんだか誇らしく思えます。
穿いていると、黒い方はよりタイトな雰囲気に思えます。でも穿いた感じはタイトではありませんので。ただ、ウェストのタブベルトの仕様に慣れてないので少々面倒は感じています。なんだかんだ言ってきましたが、この仕様が最も大人的なの要素のように思えてきました。こんな仕様(スラックス的)のものは大人じゃないと穿きませんからね。