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Entries by CITERA

 

定番中の定番シャツといえば、オックスフォードのボタンダウンシャツ。という認識はどこまで通用するのか?「通用」というのは少し語弊があると思うが、育った年代で違ってくるのかもしれない。恐らく、大雑把に言うと昭和40年前後から昭和60年くらいの間に生まれている人、にとっての定番と言えば80%以上はオックスフォードのボタンダウンシャツになるのではないかと。

何故そう思うのかといえば、個人的にはやはり思春期を過ごした1990年前後はヴィンテージも含めてアメリカの文化に魅了された人が多かったわけで。何でしょうね、アメリカの50年代、60年代の文化ってとても輝いている様に思える。音楽、映画、車etc。もちろんその後もアメリカは輝き続けるわけで、90年代でもパタゴニアを筆頭にアウトドアやスポーツブランド、SONYの逆輸入製品とか、ウェアやギアも含めて現行品であっても憧れたものです。





 

初めてニューヨークに降り立った時のあの感動。経験したことはないけれど、アーティストがそこそこ売れはじめ、憧れの武道館のステージに立つ、とでも言いましょうか。「うわ~、テレビや雑誌で見て聞いて、古着屋やセレクトショップで見た物たちの故郷にきたぞーっ!」っていう大袈裟な程の感動。とにかくアメリカだったわけです。日本では1万円もするペラッペラなチャンピオンのヤッケが3千円もしないし、道端で売ってる3ドルのレコードが日本では6千円とか。日本では特別だけど、こっちじゃ野良猫程度の扱いなんだな、と。片道13時間というのはなかなかな距離なのだな、と思いもしました。もちろん街を歩いて黒人のホームレス集団にカツアゲされたりもしましたけど、それも含めて「あ、これがアメリカだな」と、旅行者ではあるが、今この瞬間アメリカに溶け込んでいるんだ、と実感し喜んだものです。

で、シャツ。オックスフォードのボタンダウン。ブルックスブラザーズやラルフローレンのボタンダウンシャツを古着屋でよく見ていたし、セレクトショップでも置いていたもんだから、刷り込みみたいなものですね。シャツといえばそれ、となったわけです。もちろんそうなったのはアイビーとかスタイルサンプルとして切り取られた、アメリカンニューシネマ内でのスタイリングなどの影響なのだと思います。





 

Tシャツにスウェット、デニム穿いてスニーカー。シャツ着てもネルシャツとかだったのが、少し大人になってボタンダウンを着る。そんな感じでした。ボタンダウンのシャツを着るとお洒落している気分でした。全くそんなことはないのだけど、少し誇らしげに思えたものです。18歳くらいということもありますが、シャツ一枚でそう思えるほどの時代背景だったのです。今となっては誇らしくも、お洒落しているとも思わずにTシャツ同然で着ているわけですが、作るとなれば細かいところは拘りたいなと。

生地、ボタン、縫製、洗い後の風合いなど、何処か温もりのあるものにしたいと思ったわけです。恐らくそれはアメリカの製品に感じた、人が作った手仕事感みたいなものを持たせたいなと。アメリカ製品は量産品でも安定しなくて形が少し違ったり、ミシンの力や生地の強さのせいで洗った後にディテールが出てきたりして、実に面白くて個性がある。だから古着でも良いものに見えたのかもしれませんね。何なら、古着になることでよりよく見えたのかもしれない。





 

だから、というわけではないけれど、よく使ってよく洗って使い倒してもらいたい、と作り手としては思うところです。買った時から既に自分だけの1枚なのですが、より自分に近いもの、にしてもらいたいのです。物に意識はありませんが、こちらがその物に意識を向けて愛着を持つことはできますので、自分の時間で作ったお金で買った物ならば、できるだけそうしたいと僕は思っています。




 

このシャツは昨年リリースし、今シーズンはサックスブルーを追加し引き続き出した物ではありますが、やはり生地の起毛した面を肌側にして、着て肌に触れた時の優しい感じがとても気に入っています。縫製面もねじれの出た感じや、縫製の巾とか細かい縫い糸の数(運針ってやつです)とか、ぷっくりとふくよかなボタンとか。ただのシャツですが、細かいところに目を向けると色々とあって、それらが温もりを作り出している様に思えてきます。

着て終わりではなく、些細なところに目を向けてみると結構情報が詰まっているので、それらが語りかけてくることがあり、物に対しても情を持てるといいますか。





 

外見的にセルビッチが出ていてアクセントになっているので、そこをポイントとして気に入っていただけることも嬉しいですが、それ以上にも気に入ってもらえるポイントはあるので、手に取った際には、秋の夜長の共としてじっくり見て袖を通し感じても欲しいところです。関東では、今週末あたりから気温の低下する日も出てくるそうなので、ようやくこのシャツを本格的に楽しむ時がやってきます。

この冬はどんな冬になるのか、とても寒いのかそこそこの寒さなのか。まだわかりませんが、暖かくして風邪などひかぬよう、皆様ご自愛ください。





 






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