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Entries by CITERA


シャツを着る。ボタンダウン、ネル、デニム、チェック、ストライプ、無地、開襟、襟なしなど色々と着る。しかし、キチッとしたきれい目のジャケットの下に着そうなシャツってあまり着たことがない。もちろん着たこともあるし幾つか持っているけど、やっぱり着る機会がない。スーツを着る時くらいだろうか。なんて思ってみたが、これまで作ってきたテクニカルジャケットをよく着るのだから、その中に着ればいいじゃないか。そもそもジャケットを着る習慣のなかったライフスタイルなので、作っているテクニカルジャケットもTシャツに合わせてしまう。まあそういう着方が目的で作っていることもあるのだから仕方ないのだが、中にはキチッとシャツを着る人もいるだろう。





何なら自分だってCITERAのスーツにピシッとプレスされたこちらのLS SHIRTを着てどこかフォーマルな場所に出向くのもいいだろう。しかし、そういった場にいく機会がない。結婚式とか葬式とかくらいか。授賞式にでも出席できれば良いのだが、何かの賞を受賞をする様なことなどしていない。そもそも、これまでの人生のうちで賞をもらったことがあるのか? 子供の頃、作文コンクールとか書道とか何かしらありそうだけれど、思い返したところで何も出てきやしない。スケートボードで全日本の大会で入賞したことくらいか。いや、あった、あったぞ。何年か前にCITERAで作ったアウターが受賞したことがあった。世界的なアウトドア素材メーカーが主催しているマイナーな賞ではあるが、受賞経験が少ない者としては嬉しいことであった。まさか作ったウェアで賞を取るなんて、望んだことも想像すらもしたことなかった。この先また何かを受賞することがあり、公の場に出てトロフィーや賞状をもらうことがあるのなら、このシャツにAUTOBAHNを羽織り出ていくとします。






さて、このLS SHIRTの生地はというと、THOMAS MASON社製のブロード生地であるのですが、まず自分にとってのブロードシャツと言いますと、2000年前後にその頃出入りしてた原宿周りで少し流行って元ネタなどにもしていたJIL SANDERのストレッチで無地のTシャツがありました。結構な値段でしたが、確か何か冠婚葬祭でもあり調子に乗って買ったのでしょう。それとギャルソンのシャツ。柔らかく発色の良いピンク色が魅力的で、A.P.C.のグレーのスーツに合わせたら良いだろう、と思い買ったもの。JIL SANDERのは2回着たくらいなので逆によく覚えてて、1回分でウン万円かぁ、と思ったものです。ギャルソンのはデニムにも合わせたりして気に入ってよく着たものです。





昨今シャツで印象に残っているものはというと、映画「AMERICAN UTOPIA」でのデイヴィッド・バーン。彼といえばライブ盤「STOP MAKING SENSE」での極端に大きいスーツ姿が強烈でありますが、先の映画でのグレーでワントーンのスーツ姿に裸足という姿がとても印象的だでした。やはりそれは同色のグレーのシャツと裸足のおかげであって、あれが白いシャツに革靴でも履いていたら、全く普通に見えていたに違いないわけです。薄いグレーのワントーンにプリミティブな素足が、ステージ上でとても洗練されたスタイルに映っていたのです。

ニューヨークパンクからニューウェーブに移り変わる時代、アート的視点を持ちながらもアカデミックに偏らずコミカルに見せることで、オリジナリティと人気を博していたデイヴィッド。その彼だからこそ、白髪に薄いグレー1色のスーツ姿がそのステージで説得力を持っていた様に思えるのです。「AMERICAN UTOPIA」を観ていない人のために言いますが、淡々とリズミカルに進むシリアスでコミカルなステージがこんなにも心から熱い拍手を贈りたいと想わせるなんて!そんな映画です。だから観て!なんて野暮なことは言いません。





ということがありまして、頭の中にはグレーがあったわけで、グレーのシャツとグレーのAUTOBAHNを作ったのだと思います。それとも、色を決めるときにそんな話をしたことでグレーを入れたのかもしれません。それは定かではないし、今となってはどちらでもいいのですが、とにかくグレーXグレーが知的でいいと思えてしまうのは、デイヴィッド・バーンのそれなのです。

もちろん白い色もブロードのシャツとしては当然過ぎるくらい良いし、当たり前の様に黒でもグレーでもネイビーにでもバチーン!と音が鳴りそうなくらいにキマるわけで、THOMAS MASON社製の生地ということもあって、生地の目の詰まり方も細かくキュッとしていてとてもジェントルに見えます。





不思議なもので、シャツを着ると誰でも信用度が2段階くらい上がって見えちゃうもの。なので、何か良い印象を与えたい時(デートとか面接とか?いや、面接は当たり前なので役所やイミグレーションあたりで)は必ずシャツを着るべきです。当然ながら、カジュアルなものでなく、ブロードのツルッとパリッとしたものがよりよく見えるわけですし、何より、着ている本人の気分も変わることでしょう。

自分への戒めとして言いますが、いつまでもTシャツやスウェットばかり着ていないで、パリッとしたシャツも着るようにしないとダメですね。もっと大人にならないと……。










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