PRODUCT STORY

Entries by Naoki Ei, the Director/Designer of CITERA®

秋冬は毎シーズンPOLARTEC® Windbloc®にお世話になっている。コートやパンツ、そしてグローブ。どれも、この生地が本来使われるであろうアウトドアなスタイルではない。もちろんアウトドアスタイルのアイテムも好きだし、このWindbloc®という防風の生地で作れば、安心安定なアイテムが出来て良いだろう。でもそれだと、デザインが違うだけの同じものが世に出ることになり、結局買い手の決めては値段か贔屓にしているブランドかどうかであって、家族に「ま~た同じ様なもの買って……。」とどやされることだろうし、ものが溢れたこの世の中に、また意味があるのかないのかわからない同じ様なものを放っても資源とそれにかかった労力の無駄になってしまうのではないか?



 

動物を見て思うことがある。所有物がなくシンプルでいいな、と。服すら持ってない。何かに執着する気持ちがないってすごい。もちろん執着することがないわけではなく、彼らは生きる事に全力で執着してるわけだ。こんなことしたら恥ずかしい、とか余計な羞恥心も無いだろうし、他人の失敗とかにも興味なさそうでほんとシンプル。といっても「失敗=命を落とす」なんて物凄い世界なのだけど……。日々綱渡りをしている状態とでもいったらいいのか。ペットや動物園では別の話ではあるが。そして、動物だからといって羞恥心がないとも限らない。彼らは言葉でも文字でもそれを伝えてこないので、こちらが勝手に羞恥心とかプライドとかがない、と思っているだけかもしれない。




 

友人の中に数名動物と話ができる、というか「飼っているペットが喋る」言う友人がいる。否定はしないが、友人が一方的に話しかけている姿しか見たことはない……。まあ、本人がそう言うならそうなのだろう。そういう動物なら、人と同じように羞恥心もプライドもあるに違いない。もう一度言うが、しゃべっているところを見たことも聞いたこともないが、飼い主がそう言うのだからそうなのだろう。ただ思うことはある。ゴリラやチンパンジーなら人が家族同然に育てれば、その内喋り出すのではないか?と。だからイヌもネコも然りだ。もちろん身体の構造からしてそんなことはないのだけど、彼らを見ているとそう思えてくるし、しゃべり出せ!とつい思ってしまう。

ここ数年、家にほぼ毎日食事をねだりに来るネコと、京都市動物園のゴリラ一家のインスタグラムのアカウントにぞっこんである。動物はシンプルでいい。




 

そんなこともありシンプルな生き方に憧れる。物など持たずただその日1日を生きることだけにフォーカス。それは極端だが、そんな思いもあってか着る服も極力シンプルなものがいい。しかしどこか潔くないところがあり、シンプル過ぎるよりも、アクセントがあったり何か味のあるものがいい、そんな風にも思ってしまう上、色々なものを着てみたいとも思う。しかし、そういう潔くないところこそが人間らしい素直さなのかもしれない。動物たちと線を引くつもりはないが、それは人間の個性であり権利でもあり、であるからこそ、その潔くない人間らしいクセを存分に謳歌するべきではないのか?

そこで今回のチャイナスタイルについて。

元々チャイナジャケットを着てみたかったのだが、チャイナスタイルはどこかやり過ぎなイメージがあった。長年そう思いながらも、いつか着てみたいと思っていたが、自分はそこまでオシャレをするタイプでもないし、シンプルなのが好みということもあって着るきっかけを掴むことができなかった。というより、正直言うと着る勇気がなかったのだ。しかし、Windbloc®の生地を見ているうちに、チャイナスタイルに飛び込んでみようと思ったのだ。それは自分史上最大の決死のダイビングだ。着たことすらないのに作ってしまおうというのだから。

ブルース・リーにジャッキー・チェン。彼らは強く格好いい。子供たちは皆強く憧れたものだ。ヌンチャクを振り回し、高いところから飛び降りたりして、リーやジャッキーになりきったりもした。彼らの強さを思い出し、勇気を出して着てやろう、作ってやろう、と。恐らくこの機を逃したら一生チャイナに袖を通すことはなかっただろう。


 

サンプルが出来上がってドキドキしながらも、ダメもとで袖を通して思ったのは「あれ?」である。そう、チャイナスタイルであるのに全く違和感がない。それはこのPOLARTEC®の生地のおかげである。着た瞬間に全くもって普通のブルゾン感覚が現れ、気恥ずかしさなど微塵も感じない。そもそもチャイナスタイル自体がそんな大袈裟なものではないのかもしれないけど。いや、私には大した障壁だったのだ。

もちろん、自分でそのハードルを下げたのは確かである。フリースならいけるかも?、まず初めにそう思ったのだから作り出したわけだし、異素材も使い、リベットやコードストッパーなども付けハイブリッドな雰囲気にてチャイナ感を薄めたわけだから、そりゃ着やすいだろうよ。でも、ただ着やすいだけではない。防寒用の生地なのだからしっかりとした機能もありそして軽い。もちろんダウンなどと違って中は薄着でもいい、というわけではないぞ。普通程度に着込んで襟巻きでもすれば冬も乗り切れる、そういう防寒感覚ではあるがそこいらのブルゾンでは得られない寒気に対する機能はしっかりと持っているのだ。


 

そしてパンツ。チャイナジャケットに合わせたアイテムではあるが、これ単体では全く普通のイージーパンツだ。しかし普通過ぎにならぬ様に気を使っている。リベットやシャイニーでルックスの良いファスナー、裾の生地の切り替えなどディテールが盛り込まれていたりする。そしてイージーパンツらしからぬスッキリとしたシルエット。そんなこともあってともて素敵なイージーパンツに仕上がっている。そして何より暖かいのだ。上着よりもパンツの方がその機能性を感じやすいので是非試して欲しい。暖かい室内では場合によっては暑いかもしれないくらいに、一度味わうと冬には欠かせぬものになってしまう。

もちろんジャケットだって単体で着てもいい。デニムやスウェットにも合うし、パーカーと着てもかわいく、とても着回しのいい冬のブルゾンである。チャイナだからとか関係なく、既に持っているワードローブの中身に変化をもたらしつつも、その他の物たちと日々違和感なく使えるものをこの冬用意できたことが、本日のメールで最も伝えたかったことなのかもしれない。

 




BACK TO INDEX