コインポケット付きの5ポケットでベーシックなスタイルをコーデュロイで、という極めてシンプルというかスーパーべシックなアイテム。で・す・が、コーデュロイでこういったパンツというのが実は探すと少ない。特にちょうどいいシルエットでとなると本当にない。こういったパンツの本家であるLEVI'Sでさえも、ある時ない時がある。もちろんそれは商売的に売りづらい商品だから定番として安定したリリースをしていないからなのだろう。しかしだ、こちらは普通の5Pのコーデュロイパンツを穿きたいのである。
結局、古着でLEVI'Sを探したりするが、サイズやシルエット、そして状態という問題に阻まれ納得のいく5Pのコーデュロイパンツが見つからないのである。ではどうしていたか? なんの主張もなく普通で、デザインされていないけどシルエットが素晴らしいものなどない中でも、妥協をしながら穿いていたものは何か? 1969年からあるアメリカ発の大衆ブランドのものだった。しかし、大妥協の上でのこと。生地は余計な気を回したのかストレッチだし、これギャランドゥが見えちゃうぞ?と思うほど股上浅いし、コーデュロイの質感がふわふわだし、裏のポケット生地に変なプリント入ってるしとか、まあ目を瞑らなければならない箇所は星の数ほどあった。
そんなこともあってCITERA®で作ることにしました。ずっと作りたかったのだけど、世間的な需要や他のアイテムとの並びの兼ね合いなどを思うとこのタイミングまで出せなかったが、今こういったものがあれば、世間的にも「痒いところに手が届く」的な感じで欲しい方もいると思えた。でも、ただの5Pのコーデュロイパンツでは面白くない。だからといってラインストーンとかスタッズとかを盛り込みデコラティブにしたり、余計なデザインを入れてしまっては、クラシカルなスタイルを台無しにしてしまう。そうではないのにアジのある格好いい5Pのコーデュロイパンツはなんだろう?と考えてみれば、やはり穿き古した際に見せるコーデュロイ生地の渋さだ。よく掠れた箇所とのコントラストが見せる魅力的な陰影はたまらない。
とはいえ、デニムとは違うので穿き込み過ぎて畝が潰れてシラっちゃけたものだとどうにも見窄らしいのではないか?と心配してしまう。程よいカスレ感を持ちつつ綺麗な5Pのコーデュロイパンツであれば強烈に欲しくなる。さらに、シルエットはストレートでもスキニーでもない、全体的に少し余裕のあるフィット感でありながらテーパードが効き、股上は深くも浅過ぎることもない完璧なもの。コーデュロイだとどうしても生地にボリュームが出るので、極力スッキリした仕様が望ましいためそこにフォーカスし、穿いた時に美しく見えるところへの着地を目指し、パターン、加工具合をトライしていったわけなのです。
リベットの鏡面も美しさを保つために、加工後の打ち付けとし作業工程の効率化を無視した製品クオリティー優先でプロダクションを進めました。
ベーシックなスタイルで、コットン100%ではあるけれどシルエットが美しいので、CITERA®の他のジャケットやアウターとの相性もとてもよく、使い回し易いパンツでもあるし、コーデュロイなので気分的にも暖かく感じます。といっても、それは薄い生地のものと比べれば絶対に暖かいというくらいで、コーデュロイだから抜群に暖かいというものでもないと思います。
平織の生地よりは厚みがある分、空気を溜め込む場所があるのでその分は暖かいのは確かではあります。もっと畝が太く大きいものならさらに保温性は高いのですが、それだとまた違うスタイルになるし個人的にはそういった畝の太いガッツリしたコーデュロイはあまり好きではなく、古臭いというかスタイリングがどんよりすると言いますか……。まあ重たく見えて軽快感に欠けるということです。多分パンツのスタイルをそういった生地に合うものにすれば可愛いものになるのでしょうね。
デニム同様、ワードローブにはもう穿く事もないコーデュロイパンツが積まれており、それらがあったからこそこの5P CORDがあるわけです。断捨離と言ってそれらを処分することなんて生きているうちはないわけで、そのコーデュロイの山の頂点には今のところCITERA®のこの5P CORDが君臨し、そしていつかその頂点が上書きされる時が来ることを願いながら、今日もこのコーデュロイパンツを穿いているのです。それがCITERA®によるものなのか、そうでないのか? 今はそれがCITERA®であることを願いたい。
ちなみに、私は冬だからということを考えず夏でもコーデュロイのパンツを穿いてしまいます。気になるほど暑いとは思わないです。穿く、穿かない以前に既にもう暑いからだと思いますが、下半身が異常に暑いとも思いませんので、もしかしたら、コーデュロイというのは冬は暖かく夏涼しいのかもしれない? いや涼しいなんていうことは絶対に有り得ないけど、手押しのパッチと、バックポケットのレザータブのお陰で、このバックスタイルが可愛いので、やっぱり私は夏場であってもこいつを穿き続けてしまうだろう。