DIRECTOR’S JOURNAL

Entries by Naoki Ei, the Director/Designer of CITERA®

LFOM Vol.11

last friday of month 2020.4.24

GWを目前に控えた4月下旬、今年は毎年のようにGWを待ち遠しく思う華やかなムードではない。
誰のせいかと言えばアイツである。
しかし、もう聞き飽きた感もあるので敢えてここでアイツの名を出すのはやめておこう。
こんな言い方をすると不謹慎かもしれないが、未知の体験はいつも刺激的である。
良くも悪くも世の変わり目となりそうで、そんな瞬間に立ち会えたことを「幸運」としておくのは些か言い過ぎだろう。
しかし、折角なのだからその瞬間をしっかりと目に焼き付けておくとしよう。
今ここに生きていることを「幸運」ととるか「不運」ととるかは、人それぞれ。
「生きているだけで幸せ」と捉えるなら、今の現状も幸せの中の一部分なのである。
そう思えばこそ、これまでやってこれたのだから、こんな今も楽しく過ごせるはずである。
今一度身の回りに溢れている喜びを再認識し、日々精一杯楽しく生きることに努めるのが正解なのである。



さて、今月のLFOMは久しぶりにプロの話を聞いてきました。
神奈川県藤沢市にあるパン屋さん「Madame Rouge」(マダム・ルージュ)の店主である、土屋伸明さんに登場していただきます。
パン屋さんと言ってはみたが、Boulangerie(ブーランジェリー)と言うべき存在。
人それぞれ、自分が住む街にお気に入りのお店はいくつもあると思うが、果たしてその中に、わざわざ人に心底自慢したい良い店はあるだろうか? 僕にはある。
それが「Madame Rouge」。
いつになく緊張しながら店に向かい、店主の土屋さんにファン心丸出しで話を聞いてきたのでその模様をお楽しみください。



-永:こんにちは、今日はよろしくお願いします。

-土屋:こちらこそよろしくお願いします。

-永:告白します。
本当にマダム・ルージュのパンが好きなんです。
自分が住む街にこのお店があって本当に幸せです。
今日はそれが言いたくて。
もちろんそれ以外の話もしますけど(笑)。

-土屋:ありがとうございます。

-永:いいえ、お礼を言いたいのはこちらの方です。
藤沢にこんな美味しいパンを売るお店を出していただいてありがとうございます。
なかなかこういった素敵なお店が近くにあるってそうないと思うので、特に藤沢では。
なぜ藤沢にお店を出されたのですか?

-土屋:東京出身なのですが子育てを機に海がある場所でお店を開きたいなと思いまして。
それはサーフィンが好きだからなんですけど、波のことを思うと千葉や茨城が良いのですが、パン屋というお店をやっていくことを考えると湘南が良いと思いました。
それで鎌倉に住みたいと思って引っ越してきたのですが、土地勘もないのでまずは自分の足でリサーチし始めました。
その中で思ったのは、鎌倉は観光地ということもあるせいか人通りのあるところだとどうしても観光客を意識しないといけないように感じました。
それも良いのですが、自分はもっと地域に根ざして町の一部になるようなお店がいいなと思って、隣の藤沢にも足を伸ばしてみたところ今の物件に出会いました。


-永:そうだったのですね。

-土屋:それで藤沢を自転車で見て回っていたら、今のこの場所は以前もパン屋さんだったのですけどいい場所にあるな~なんて思っていたところ、相談していた不動産屋さんから「この場所が空きますよ」って連絡がきたのですぐにこの場所に決めました。
藤沢のことは何も知らなかったのですがそんなタイミングだったので決めたけど、街もいる人たちも良かったから結果的にはすごく良い選択でした。






-永:初めてマダム・ルージュに来た時に感じたことは、まずパンを食べる前にお店として志が感じられたことです。
パリを思わすというか。
と言っても僕はパリは1度しか行ったことないから知らないのですが、パリと同時進行でやっている、という意気込みみたいなものを感じたというか。
それは厨房が見えてたり、外観だったり、店内の内装もあるのかもしれないですけど、言葉とか形ではない「空気感」がそう思わせたのだと思います。
パリをよく知らない僕の中にあるパリ感と一致したと言いますか。
やられている方がパンやパリが好きな方なのだろうなと。

-土屋:そうですね、パンもパリも大好きですね。

-永:フランスにもいらっしゃってたのですか?

-土屋:はい、1年ほど修行で行ってました。
そこでのパン職人として暮らしてた経験をここで表現したくて。
もちろん日本でも代官山にあるヒルサイドパントリーや、ベーカリーシェフとしてホテルなどで勤めてたこともありますが、フランスでの暮らしの中にあるパンと生活との関係性に驚かされたと言いますか、日常食であるバゲットやクロワッサンがとても美味しい上に手軽な値段というのに感銘を受けました。
やっぱりそれを自分でもやりたいなと。
パン屋ってお菓子屋さんやレストランと違い日常食だと思っているので、毎日食べてもらいたいじゃないですか。
だから価格もそれに見合ったものにしたいというのが根底にあります。


-永:なるほど、それで値ごろ感があるわけですね。
初めて来た時に驚かされました「安っ!」って(笑)。
そういう自分の経験から得た感覚を大事にして、それを日々の仕事の中に反映させるのってとても大切なことですよね。
パンの味、お店の雰囲気、スタッフの表情その全てがとても生きててポジティブな空気を出していますよね。
それがすごく伝わってくるんですよ。
もちろんパン一つをとってみても美味しいですし、その美味しさにすべてがついて来ているから、お客として来た時にここでの買い物はすごい充実感があるのだと思います。
たとえ店に来なかったとしてもパンを食べただけでもその雰囲気が伝わるようにも思えるんです。
東京の飲食系の友人にもすごく評判が良いのがその現れだと思います。





-土屋:そうですね、お店に関してもパンと同じくこだわって手をかけたというか、外観なども自分で塗りましたし。
これをいうのは少し照れ臭いのですが、何より店名である「マダム・ルージュ」は、妻の「あかね」の「あか=赤」から付けたものです。
そういったようにマダム・ルージュはパンだけではなく全てにこだわった店だ、という自信があります。
もちろんそれに中身が伴うよう、日々工夫の連続ですけど。
パンをよく入れ替えるのもその一つですね。
生活してる中で目にした食材や季節のものを取り入れて新しいものを積極的に試すようにしています。


-永:素晴らしいですね。
そしてもう一つ気になる点があるのですが、フランスの今のパン事情というか現状をちゃんとチェックしていますよね?

-土屋:はい、それは常にしてます。
現地にいる修行時代に出会った仲間や、フランス修行に行ってる元スタッフ、そして師匠が沖縄にいたりするのですが、そういう人たちとのコミュニケーションは大切ですね。
もちろん自分も今を見るためにフランスに行って直接彼らに会ってコミュニケーションをとるのも大切ですし。


-永:いいですね、だた日々パンを作って売っているだけではないその姿勢。
飲食ってそういう国や地域をまたいだコミュニケーション環境があるのがとてもいいですよね。
それと、サンドイッチやデニッシュは当然なのですが、最近ハード系の人気も高いですよね?

-土屋:そうですね、ハード系に慣れてらっしゃらないお客様も多いと思うのですが以前よりよく動くようになってます。

-永:僕はハード系が好きなので「オメガ3」というパンが最高に美味しくてよく買うのですが、以前に比べて買いづらくなってきてますもんね。
もちろんカンパーニュやバゲットも同じように買えなかったりします。
でもそれはファンとしては嬉しいことなのであまり気にしないでください(笑)。

-土屋:オメガはヤバイですね。
あっという間になくなってしまいます。


-永:あ、やっぱり(笑)。
じゃあ前の日までに予約の連絡を入れるようにします!それと、以前に何かの記事で読んだと思うのですが、「近所の人たちが仕事帰りとかに気軽に立ち寄れるスペースも持ちたい」みたいなことを見たのですが、それ個人的に結構期待してるのですが今もその思いは変わらずですか? 



-土屋:そうですね、パンは昼過ぎにはなくなってしまうのでスペースの有効活用はできたらいいなとは思いますよね。
夕方から夜に月1回でも2回でもいいのでパンとワインを出すことができたら楽しいかなって思ったりします。
僕はごはん党なのですけど……。


-永:えっ!! まさかのごはん党!(笑)

-土屋:はい(笑)。
お酒はあまり強い方ではないのですが妻がワイン好きで、余ったパンを使った料理にワインを合わせてて、それがものすごく美味しくて。
「お酒に合わせるとパンてこんなに美味しいのか!」って気づかされました。
だから、普段来て頂いているお客様にそういう食べ方もありますよ、と提供できたらいいなと考えたりします。
いつか実現できたらいいですね


-永:是非、実現して欲しいですが無理はせずで。
これからも通いますので、ファンを代表して言わせていただきますが、これまで通り常に気になる素敵なお店として僕たちを楽しませてください。
今日はどうもありがとうございました。

-土屋:いつでもお待ちしています!こちらこそありがとうございました。




神奈川県藤沢市にあるマダム・ルージュは店主である土屋さんの情熱が詰まった宝箱のようなお店。
自由に行き来できるようになったら海へのドライブや、鎌倉観光のついでに足を伸ばしてみてください。
行かれる際、必ず午前中に行くことを心がけてください。
午後に行ってもお店はもぬけの殻です。

※コロナウィルス対策のため3名ずつの入店となり、並ぶ場合は間隔を開けて店先から並ぶことに「ご協力ください」とのことです。

Madame Rouge(マダム・ルージュ) 
https://madame-rouge.com
神奈川県藤沢市朝日町12-1
TEL: 0466-86-7713

Photo:Satoko Imazu(Madame Rouge)






冒頭でも言いましたが、改めて身の回りに目をやってみると発見があります。
普段からただでさえ楽な格好をしていますが、家にいる時間が異常に増えたのでよりリラックスできるものを着たいと思うようになりましたし、これを機に過去に作ったものを改めて試して何か発見がないかな?なんて期待しながら最近ではもっぱらこちらを着ています。




生地が薄いけどしっかりしているので通年使えそう。
ずっと着ていてもへたらないし、何より楽なのがいい。
ダラしないですが、これで寝て昼間もこれで過ごして、なんてことも可能。
このまま近所のスーパーにも出かけられるし。
ダラしなくなるいっぽうである。
こんなものを作った自分がけしからんとさえ思う。
「移動を快適に」と言いながら全く移動の無い中でも非常に機能するウェアであると再認識。
来月更新の頃はどんなことになっているかまだ誰も予想できないですが、素敵な未来が来ることを信じ自分の手と足で作り出すことに努めますので、また次回も楽しみにしていてください!