SOUL FINGERS
Blue Note音源からオルガンをフィーチャーしたコンピレーションアルバム「SOUL FINGERS」。
ピーター・バラカンによるセレクトで1990年リリース。サブタイトルに"...and funky feet”とあるが、日本人のイメージするFUNKYとは違う60年代後半に登場した新しいJAZZとしての”Funky"さである。聞いていてすごく"小気味好い”感じで全てがうまくいく様なポジティブな気分になる。
このアルバムリリースは、東京のクラブシーンにJAZZ旋風が巻き起こるちょっと手前の出来事。東芝がブルーノート音源の復刻版を出したことがきっかけでリリースされただけで、その後に起こる”TOKYOクラブ・ジャズ”シーンを先読みしたものではないだろう。しかしながら、このタイミングの良さは、カウンターカルチャー的なことが世界的に同時多発で起こっていた一つの現象である。そしてセレクターが当時世界を読み解くブロードキャスターとしてのピーター・バラカンということも関係しているのではないか。イギリスではレア・グルーヴ、NYではヒップホップによるサンプリングソースなどでJAZZやSOULを掘りまくるという、新世代たちが幼少期に触れてきた本物の音に反応していた。日本では、高度成長期からオイルショックを通過し、80年代に頂上まで一気に駆け上り、盆と正月が同時に来てしまった様な、また、マーチン・スコセッシ「AFTER HOURS」の様な世の中の乱痴気ぶりに辟易し、時代の変わり目を感じ取るクレバーな人たちは自分たちのルーツや新たな道を目指し、世界に反応しながら本物へ回帰した結果であろう。ただ偶然に企画された1枚のアルバムが30年近く経ったいま、この様に振り返ることができるのだから非常に興味深い1枚である。当然この中にもレア・グルーヴやヒップホップネタになっているものも無意識のままに収録されている。
ということとこのタイミングでこの可愛いジャケットのCDを取り上げたのは全く関係なく、オルガンの音色と収録された曲たちが寒い時期になると実にしっくりとくるために、毎年この時期になると聴きたくなるから。暖房だけでなく室内の体感温度を上げるよいツールである。