
ようやく夏も終わりになった、と思っているのだけれど何となくまだだらだらと未練がましくその空気感を引っ張られている感じがして気持ちが悪い。 こちらはさっさと手を切りたいのに催促しても貸したものを返してもらえずにいる別れた相手の様である。 あまり良い例えではないのは自覚しているが、そのくらい何ともモヤモヤしている2025初秋なのです。 結局10月終盤までは半袖で行けそうなのが日本の季節のスタンダードになるであろうことで気持ちをアップデートし、来年はモヤモヤせずに10月を過ごしたいと思うのです。 気候の転換期でもあるし、戦後に作られたシステムも80年も経てば無理が出るのも当然で色々なことに無理が生じそろそろ組み替えないといけないのだろうが、戦後システムで長いこと生きてきた人達のOSは入れ替わりそうもないので、天気にも社会システムにもモヤモヤし一体この国はどうなるのだろうか。 若い人たちには申し訳ないが、この国の未来は明るくないだろうことは明白と思わないわけにもいかず……。もちろんそんな悲観的になっても仕方ないので個々で新しい道を作っている人もいるでしょう。
若い頃に外国に行き、特に僻地へ行けば行くほどなのですが、SONYやPanasonic、TOYOTAとか日本の企業の大きな看板を目にすると、戦後4、50年をかけ世界にその技術力を見せつけたことに改めて気づき、日本人として誇りに思ったものです。 そうして企業の父、ビジネスの偉人と言われる人達にまつわる本を読んだ中で、最も頭に残っているのはSONY創業者の一人、盛田昭夫。技術の井深とマーケティングの盛田によってSONYは世界に羽ばたくのだが、その意志を注いでいたのはスティーブ・ジョブズだったからこそ頭に残っているのかもしれない。 無駄のない美しいプロダクトデザインを実現し、それによって人々の生活を変えること。それが明確であればあるほど海や言葉を越えて人々に愛される。もちろん先端技術を使ったマスプロダクション製品であれば、同じ形のものが長く使われることはなく、年々新しい形となって生まれ変わっていくものです。 80年代初頭にアメリカでのTVショーでインタビューを受けた盛田による、革新的なプロダクト構想は今も有名動画サイトで見れるので興味ある方は探してみると良いかと思います。今当たり前にできていることをその時点で描いていた一人ということがよくわかります。

洋服というものは、それと違って進化しにくいものであって、人の形に付随するものであるために基本的に変化が求められないところがその理由になります。 もちろん生地や構造、新たなパーツを付けるなどによる進化はありますが、眼を見張るような革新的な進化というのが見られないのは仕方ないのかなと思います。この2000年を境に通信技術とハードウェアの革新的な進化によって売り方や宣伝方法は変わったけれど、服自体はやはり現場のものというオーガニックな立場は変わらない。 それを思うと、今はついつい最先端なことを意識したり、そこで物事を考え始めてしまいがちだが、根本的なことが変わらないのであればそこに立ち返る必要がある。そうすることで新しい道が見えてくるわけです。 「温故知新」や「古きを訪ね新しきを知る」などという言葉があるので、方向を見失った時にはそこに習うことで霧が晴れることがあるかもしれない。 物事の本質を見極めるというのはそれとも似ている様に思えます。やはり本質はその原点に帰依するわけで、原点は常に忘れてはならないのです。

何がしたかったのか? 唐突ではありますが、テクニカルスーツの原点て何だ?となれば、それは快適に着られること。 「テクニカル」という言葉に引っ張られて表面の質感はスポーツっぽいものが良いとばかり思っていました。 当然それでよいのですが、「快適」ということと「スポーツウェアの原点」に立ち返ると必然的にスウェットとなるわけで、クラシカルなスポーツウェアをテクニカルスーツで表現するにはどうしたら良いかを練っていった形がこのRUMというアイテムなのです。

世間にスウェット地のジャケットがないわけでもなく、それだけで考えれば特にどうしたということでもありませんよね。 鹿の子素材のものがあったりもしますし、まあよくあるというか。 それらを見てると、確かに普通のジャケットよりも快適そうだし、カジュアルっぽくも見えるので使い勝手は良いだろうことはわかります。 でもどうしても着たい、欲しいとは思えないものばかりで……。どこかおっさんっぽいというか、どうしても重く(鈍いというか何というか……)見えてしまう気がするのです。 スウェット地という素材自体の見え方のために仕方ないのかもしれませんが、何でしょうね?イメージとしては、オリンピックで入場してくる選手っぽいとでも言うのが良いかもしれませんね。それらがスウェット地ではないのでしょうが、そんな重いイメージです。 あ、わかりました、漠然とおっさんと言いましたが「おっさん=昭和感」ということだと思います。

さて、テクニカルスーツの一環としてスウェット地で作るには、そう(昭和っぽく)見えない様にする必要があるわけで、我ながら面倒なことに手を出したなぁ、とは思いましたが仕方ありません。 だって作るって決めたんだもの。他のテクニカルスーツにある様に異素材は使うとしてどう使うか。 結果使い過ぎない程度で袖裏だけとしました。それは肘が抜けたり摩擦でテカることを避けるためです。 前ボタンも2つより1つの方がスッキリと軽く見えますし、遊びの余地があるというか。ディテールとかデザインを詰め込むことも必要なものや時はありますが、RUMに関しては引き算した方が着心地同様に見た目にも快適性が現れるということです。

引き締まった部分があることで全体の雰囲気にテンションがかかるので、袖と裾にリブを使いましたが、リブを使わなければ抜け過ぎるというかそこがおっさんぽく見える元凶だったような気がします。 それは私の感覚なので、こっちの方がよりおっさんぽく見える方もおられるかもしれませんが、そう思った方は苦言を言わずにただスルーしていただければ幸いです。 ポケットの角度や胸ポケットにリベットを使いやり過ぎない様に控えめにディテールを置いてあります。 そしてパンツの方は、リラックスフィットという具合で少しゆったりめです 。内側は可愛い組成のポーラテック製機能素材を用いて少しトリッキーな仕様になっています。それは実物を手にした人のみ確認できるというわけですので、ご興味ある方は是非トライアルサービスにて確認いただければと思います。 ジャケットの仕上がりとそのパンツのフィット感によるバランスも相まり、トラックスーツ感覚で着られる非常にCITERAらしく自信を持っておすすめできるアイテムになりました。
