PRODUCT STORY

Entries by CITERA

洋服界隈では8月から既に秋冬シーズンに突入していますが、実世界ではまだまだ気温は高く着ているものは夏服のままであり、10月に入っても30度近い気温予想も出ているため、まだ暫くはワードローブの入れ替えにも着手する気が起きないことでしょう。 「暑さ寒さも彼岸まで」と言いますし、実際毎年その頃には暑さも和らいでくるので今年もそうではあるのでしょうが、彼岸の頃一旦は落ち着きつつも平気で30度越えをぶり返すポテンシャルはここ数年の恒例的流れではあるかと。 やっぱり9月ともなれば暑さがおさまる、というイメージというかそうあって欲しいという願いはあるわけで、日々置かれている気温状況に身体は対応しつつも頭の中ではまだまだ「四季のある美しい日本」というイメージが残っているためにこの9月、10月というのは気分がモヤっとしてしまうのです。 お気に入りのブランドからは秋冬の新作がリリースされ、それらを手にはしたいが実際に着られるわけでもないこの気温、そして暑さに苛立ちをあらわにし、ただでさえ長くない初秋の、気持ちのいい乾いた風と装いを早く返していただきたいものです。 半袖着てたら急に寒くなり、その上にいきなりアウターなんていうグラデーションのない極端な進み方、それってレディースのノースリーブでタートルネックになっているウールニット的なあの「寒いの暑いのどっち?!」という喉の奥が痒くてもかけない感じがしてしまうものです。

人というのは勝手なものでして、地球に生かされている存在であるにもかかわらずどうもその地球の上に胡座をかき、こちらのわがままを地球に押し付けないと気が済まない、だけどそれが敵わないことにイライラしている小さな存在であるのに、それを自分のことだとは認識できない生き物である。そんな風に秋の夜長に考えたい気分であるのに窓を閉めた家の中では、クーラーのファンの回る小さな音が虫の音を掻き消し風情もへったくれもない、これが現実の2025初秋というわけなのです。





もう一つ言いたいのは、日の入りもすっかり早くなり18時にはもう夕暮れ時を過ぎ夏が終わった寂しさを感じながら心地のいい秋風が頬を撫で少々感傷的になるはずなのに、湿度を含んだ重たく気持ちの悪いヌルい風に撫でられても少しも感傷的になれず、冬への心づもりがいつまでもできない事態でもあります。 そういったわけでクーラーの設定温度を少々低めにし、一枚余計に秋冬ものを室内で着るという無理矢理な過ごし方をし、気分を調整するしかなく、裏地がさらりと気持ち良い今季のジャケットを羽織りながらこうして思春期でもないのにダラダラと文字を並べ続けていこうと思います。





FROSCHとはドイツ語でカエル。別にデザインにカエルのモチーフがあるわけでもなく付けたその名前はどこから来たのか。 工業デザイナーであるハルトムット・エスリンガーが主宰する「フロッグデザイン」は、80年代アップルをデザインという切り口から様々なアプローチで支えていたのです。 そのフロッグデザインが生み出すデザインには、全てにおいて理由と言語がありそれらが使う側に立ったことを前提としており、そのプロダクトが機能しているのです。 無駄のないデザインとマーケティングを持ちながらも、目に留まる美しさを表現している造形。 一言も喋らないその物体は、用途目的のために忠実に構成された面、そして重量や質感を通し触れる人に音ではなく言える言語として伝える力が込められていた。





そういったものが洋服に表現できるかといえば難しいかもしれないが、使う側に立ち、触れ、袖を通し身につけることでデザイン、機能、美意識を伝えることができればと思いデザインするわけです。 そこにはデザイナーのパーソナルな自己表現ではなく、一般社会における理想的な思想というものが存在しており、使う側と使われる物との双方向の関係のみが存在し、難しいことは一つもなく日々の生活が円滑になるための機能を果たせればそれで完結するのだと思います。





商品の細かい部分を説明するなんていうのは、商品ページに書いてあるのでそれで完結しているわけでして、ここではそういった部分ではないもっと形や常識からはわからない部分を伝えたいと思っています。 なので、ここまでわかるようなわからないような文章が綴られているわけです。 大事なのは、これに目を通し、画像で商品を見て気になって取り寄せて、先に書いたように直接感じ手に取った人の生活の中で役に立つかどうかであって、ありきたりなセールストークなんて必要ないのです。素材やパターンニングの機能やディテールがどんな使い心地なのかを楽しむことができれば、あなたの日々の生活にフィットした証拠。





もちろん、背面に止水ファスナーのポケットが~とかも書きたい気持ちもありますが、そんなものは画像を見ればあなたに必要か必要じゃないかなど一目でわかるわけです。 話を戻しますが、そのフロッグデザインが表現したものは直感的に理解できるものが多く、それこそがフレンドリーな存在であり言葉で説明せずに物自体が語りかけてくれるもの。 そんなものが世に溢れれば世の中はもっと角や不必要な装飾が取れてシンプルになるのですが、それでは少々、いやかなり簡素でつまらない世の中になってしまうのでよくないですね。 そういったシンプルなものは3割か多くて4割あれば良いの中になるはずです。 世の王道ではないものがあってこそ世界はバランスが取れているわけなので、そのフロッグデザインが果たしてきたことの流れを汲みながら、CITERAからリリースされるアイテムのデザインが成り立っています。 それをこのジャケットやパンツを通して伝えるためにFROGのドイツ語をアイテム名に使った次第です。





パンツに関しては、これまでもリリースしているものと見栄えがたいして変わらないのですが、それはどれもそういった思想を元にし、使う時にそれぞれのディテールが都度機能していることを意味しています。 摩擦の少ない方がいい箇所はそれに見合った素材、見た目としてのっぺりして飽きが来ないように最低限の範囲で作る切り替え範囲やメタル素材など。それらは日本庭園の置き石の様に、といえば大袈裟ではありますが、そこに当たり前の様にあるが全く邪魔でもなく、ともすれば気づかれもしないのにしっかりとその全体の景観を作るために機能している、という意味のあるものなのです。 今シーズンもこの様にしてそれぞれのアイテムに関して綴っていこうと思います。





BACK TO INDEX