

AUTOBAHNは異素材との切替パターンが売りである。それがキャッチーに見えるのだろう。一見派手な様に見えるが、着てみるとそうでもない。しかし、中にはその派手さが気になり手を出せない人もいる様にも思える。これまで1つの素材のみで仕上げたことはなく、そしてまたその仕上がりを想像したこともない。そういったものを作ろうとしたこともなかった。今回1つの素材でAUTOBAHNを仕上げたことは、先に述べた異素材組み合わせに難色を示す人がいるからという訳ではなく、ただシンプルな見た目のものを見たかった。そしてそれを着たかったというのがこの仕様を用意した理由である。
もしかしたら、光沢素材での切替パネルがないAUTOBAHNなんて「クリープのない珈琲の様なもの」かもしれない。と、どうしようもなく古いコマーシャルの文句を使ってみたところで、なんの説明にも例えにもならないのだが、そもそもわたくしクリープなど珈琲に入れませんの。珈琲はブラック派ですのよ。更に言えば薄い珈琲が好きでございます。
現在、Yで始まる動画投稿サイトにて「ベルサイユのバラ」が絶賛配信中でございまして、その世界観とオスカルの美しさにやられております。そのせいで変な言葉遣いが出てしまうのです。しかし、初めて観た「べルバラ」はなんとも独特の世界であり、実に昭和らしいダークサイドな内容。「わたくし、賭博はもうやめましたのよ」とマリー・アントワネットにさらりと言わせたり、ロリコン貴族の婚約相手には11歳の少女とか(しかも狂って笑いながら屋敷の屋根から飛び降りてしまう)、それはもうてんこ盛りでございますの。どうやら最新の劇場版が上映中だそうでそのプロモーションとしての配信なのでしょう。しかしそれは、往年のファンからすると時代を反映しているせいか物足りない内容だとか。そもそも最新の劇場版を観るつもりはないので良いのでございますが……。
ちなみに、ベルバラの作者は大学生の頃に描き始めていたとのことで、その若き才能には脱帽なのである。

さてAUTOBAHNの話。素材の構成をシンプルにした分、カフスをサムホール仕様にしたり、ネックリブを設けたりと、ジャケットではあるがよりカジュアルな仕様にアップデートし、ラフに羽織るものとしては最適なのではないかと。夏場冷房の風を遮るのにもよいだろうし、車内での日除けにもなるのではないかと。陽やライトにかざせばわかるのですが、あちらが見えるほどの網目状であり、その通気の良さは一目瞭然であるため、日差しの強い日中の日焼け防止策にもなるのではないかと。防シワ加工もしてあるので、夏場はバッグに手荒く突っ込んでしまっても構わない。

パンツに関していうならば、通気が良いために夏場は快適この上ない履き心地。それでいて軽くストレッチも効くわけで手放せなくなるアイテムであるのは間違いない。一度試せば納得していただけるはずなのだ。実際自分も夏場はこの素材のパンツを日々着用してしまったわけで、その良さを伝えずにはいられないのだ。

そしてサイドの斜めに走るファスナーがデザインとしても良いのだけれど、使い勝手としても調子がいい。スマホの出し入れがやけにしっくりくる。バックポケットの様に、座った時に邪魔になることもなく、それでいてファスナーなので落ちることもない。エクセラなのでエッジも鋭くなく、出し入れの際に手に引っ掻き傷を作ることもない。機能的でありデザインとしても効いているため、とてもモダンなスタイルに見えるアイテムだと思える。

中世の王室や貴族、そして軍部の者たちの着飾ることへの意識といったら半端ない。コルセットで締め上げたり、重量も気にせず重いものを身に付けていたわけであり、その身体への負担を考えると頭が上がらないのだが、それは裕福な者たちだけの嗜みの様なものであり、庶民はなんでもないその当時のものを着ていたことだろう。
とは言え、今から考えると着づらいものが多かったはずだ。それを思うと、このアイテムの軽さや扱いやすさは天と地ほどに差があるのだろう。にも関わらずそのデザインには、馬車と現代のEV車程の様な差がないのは不思議なものである。体感的な違いは大きいかもしれないが、基本的な見た目の形は今も昔も基本的には同じである。それは人の身体自体に進化がないから当たり前ではあるが、ディテールやシルエットなどに目を向ければ明らかにモダンなものになっているのだろう。ファスナーやカーボン調デザインのボタンなどは過去には無かったはずだし、複雑なカットの組み合わせなども現代だからこそだろう。

もちろん、昔にしかない趣向を凝らした独特のパターンなどもある。天然繊維であることで重さや独特のテンションであったからそ、パターンによって少しでも着やすくし、綺麗なシルエットが出るようにもしていたはずだ。パターンの歴史を学んできたわけではないのでこの辺りは想像でしかないのだが、人の追求心や探究心を思えば今と変わらず、昔も日々進歩することに努力を注いでいたに違いない。
それであったからこそ、今このAUTOBAHNが存在しているのだ。昔と今を比較しその差を思い、それがあたかも全く別のものであると思うのは間違いであり、過去から現在へと続いていることを実感する断片として、心しなければならない。作る側、使う側その両者ともこういった思いを一枚の衣服を通し、昔も今も衣服への変わらぬ想いを共有できることは尊いことである。過去から学ぶことこそ進化、進歩の第一条件なのだと思える。
