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Entries by CITERA



フライトジャケットは定番中の定番、と思っている。デニムパンツやデニムジャケットと同じレベルで定番である。これは世の中的にもそうであるに違いない。もちろんそれらを一切着ない人もいるであろうことはわかっている。それであっても定番中の定番なのだ。世の中を見ていればそれは明白だ。映画の主人公のスタイリングや、雑誌での特集などはそれが人気のあるアイテムであることを物語っているからだ。欧米的な永遠の定番スタイルのひとつだ。ミリタリーもののヴィンテージ市場のことに詳しくはないが、フライトジャケットは様々なものがあり、年代などによってどれも歴史的な意味を見出されている。

1940年代に作られたその時点でのデザインを基本的に残したまま今も愛され続けている。素材などは時代と共に使用することを目的として軽量化されたものが取り入れられ、快適に着用できるものになっていったのは誰もが理解できること。その他、酸素ボンベのホースを固定するためのタブや、通信機用コードを通すタブなどは機器の向上により外されていき、ディテールの進化となる。軍事的な用途で作られたものというのは、こういった仕様変更や機能的なデザインで構成されているから面白い。装飾のためのデザインではないのに、結果としてものとしての美しさを持っていたりすると、それはユニフォームであっても完全にプロダクトとして認識される。





フライトジャケットについての個人的見解はこの辺にしておき、CITERAで作った今期のアイテムについての話を。ナイロン仕様のフライトジャケットは元々ファーの付いた仕様の襟だったが、それをリブ襟に付け替えるという改良がなされたテストサンプルが存在する。その形跡としてステッチの色が明らかに違ったりするのでその存在がわかることがある。それらはヴィンテージ市場にてMOD.と表記され珍重されている。改良を意味する「modified」が付加価値となりファン心をくすぐるわけである。MA-1のスタイルを尊重し、大幅な改良を加えることなくどこまでブランドとしてオリジナリティを表現するか。これが課題であり作る側の楽しみでもある。まず生地である。基本的にMA-1の生地はツイルのしっかりしたものだ。しかしそれでは重量が出てしまう。街で着るものとしてはそれでは厄介である。「おしゃれは我慢」とはいうが、重たいジャケットを着る気などこのご時世そうそう思えないものだ。









現代では軽くて暖かくて格好いいものがフィットする。それでいてお値打ちだったりすると尚良いのだが、そこは……。お値打ちなものを優先すると他の仕様に影響が出ることが多い。ディテールを省き、生地のクオリティを下げる、縫製仕様も簡素化させる。そうするとどこかの大量生産品の様にのっぺらぼう的な表情のものに仕上がってしまう。そういったものはCITERAにおいて必要ないので、どうしてもそこそこのお値段になる。しかしそこはCITERA、他のドメスティックブランドと比べればお値打ちなのである。








MA-1といえば酸素ボンベ用のホースを固定する胸のタブであるが、それはある時から外されることになる。ただ、それがないとどうも物足りない。意味もなくデザインとしての間伸びを埋めるためにつけるのも違う。素材は替えずパネルを増やし縫製のラインを走らせることにした。余計なものは付いていないが、広い空間を退屈に思わせない視覚的な効果をそこに作る。そもそも、それだって機能としては必要ないためタブと同じことではあるのだけれど……。軽く暖かく格好よく、これを考えるとどうしてもそこに矛盾があっても、取り入れておかなければならない点であり、またブランドとしての意匠なのであるから許していただきたいところ。






背面、腰位置にも同じように切り替えた箇所があるが、これは空間を埋めるためのものではなく、元々のMA-1のような強度のあるツイル生地ではなく、耐久性はあるが椅子やバッグなどの摩擦に負けないための高密度生地のPERTEX UNLIMITEDに切り替えてある。結果として、広い背面の空間を飽きさせない視覚的効果をもたらしてくれている。その他の細かいディテールとして、刻印されたボタンや艶やかなエクセラファスナー、レザータブ、モノグラムデザインの裏地などオリジナリティあふれる仕様となっている。ひとつ大事なところを忘れていたが、シガーポケットの存在だ。今時タバコは肩身の狭い存在であり、その存在と愛煙家はなくなることはないのだが、社会的に見れば煙たがられるものとなっている。ただ、だからと言ってシガーポケットを省くわけにもいかないだろう。これこそMA-1の最重要ポイントと言っても過言ではないのだから。タバコを吸わない人なら何か別のものを入れてみて欲しい。タバコを吸う人でもタバコを入れている人を見たことはないのだけれど……。






街で着るものとして考えれば、80gの中綿で事足りる。着膨れするのは野暮であり、グローブやフード、マフラーなどで補えば軽快なスタイルのままでなんとか都市部の冬は乗り切れる。店舗、カフェ、地下鉄などビル風を避ける方法はいくらでもある。快適な装いで軽快に暖を取れることが、「軽く暖かく格好よく」なのである。CITERAとしてはそこを強調したい。気候変動によって都市部の温度は上昇し凍えるほどの気温の日は減ってきているわけで、有り難いのか有り難くないのかよくわからないところだが、そこに対応していくことが大事であり、アパレル氷河期の昨今に負けず生き残るためにも、あの手この手でブランドを存続させていかなければならないのである。













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