PRODUCT STORY

Entries by Naoki Ei, the Director/Designer of CITERA

 

最近じゃすっかりカーゴパンツなんて言いますけど、初めてはいた頃は「軍パン」なんて言ってましたね。中学生になった頃、アメ横の中田商店で軍パンを、そしてその数軒先でワゴン山積みで破格で投げ売りしているナイキのバスケットシューズを買って帰る。電車賃を入れてもかなりお得なショッピング。4、5ヶ月でスケートボードでシューズがダメになるのでその周期でアメ横に行っていて、確かその頃は映画「トップガン」のヒットで友達はフライトジャケットとかドッグタグを買いに来ていて、目的は違えど共にアメ横に通っていた記憶がある。


高校生になると古着屋(デプト、シカゴ、トールフリーなど)やフリーマーケットでもっと安く手に入れ、海外に行く様になれば、マーケットでも手に入れるようになる。そんな風にして25歳くらいまで古着屋や払い下げの軍パンをはいていたわけです。今思えば、アメリカ軍、ドイツ軍、イギリス軍、オランダ軍などを知らずに、これはポケット一つ、これは太い、こっちは細いとかの違いを識別してはいて、それ以上の違いを特に追求することなくただスタイルを楽しんでいた。それは今も同じで「どの国のどの時代でこれは何とか戦の~」なんていう知識は全くなく、ミリタリーマニアからしたら鼻であしらう程度だろう。






ミリタリーマニアはすごいと思うし尊敬しているが、僕はそれでいい。もちろん本物の生地とかディテールをじっくり観察して感心などはするが、それ以上の知識を持たずとも「軍パン」を楽しめているのでそれで十分。僕はそれをはいて何を楽しむか、ということの方を追求していた。スケートボードするのにはく、マット・ヘインズリーの真似をし膝下をカットしたり、ギャルソンのシャツを着崩すために合わせるとかそんな風に気分や気持ち次第で好きなようにはいてきた。

洋服なんてそんな風でいいと思ってて、自分が好きな様に着るのがその人にとって一番格好いい。そのことについて誰かにとやかく言われる筋合いはないし、言う筋合いもない。自分にとってそれが格好いいか悪いか、ただそれだけである。


毎度のことだが前置きが長くなってしまいました……。それ故のこのTHUNDERS CARGOなわけです。しばらくカーゴなんてはいていなかったし、手元にあるカーゴパンツでは納得もいかず、はきたい調子良さそうなものも見つからず。それで先シーズンに冬でも暖かくはけるカーゴパンツを作って、それが自分的にすごく良かったので、春夏に合わせた仕様で登場させたところ非常にいい。素材感、そしてその素材特有の肌触りとはき心地はとてもリラックスできる。裾をコードにしたのは、暖かい季節はラフな感じの方がいいと思ったから。コードが揺れている感じや好みに合わせて絞れる自由な感じがシーズンにあっている。


生地の質感的に品があり大人がはいてもだらしなく見えないのに、運動不足で硬くなっただらしない身体ではいてもストレッチが効いててノーストレス。人生折り返しを過ぎたわがままボディにはぴったりだ。先日購入した茶芯レザーのプレーントゥ(RED WING)に合わせたり、ナイキAF1、レザーサンダルなんかも良さそうだ。

雑に言ってしまえば、ストレッチでポケットにメッシュとかスポーツ系のパンツと同じなのだけど、シャバシャバしないし見た目もそれとは違う。昨今、ファッション界はテックウェアがトレンドだけど、これ見よがしにそう見えるものはNIKEとかそれっぽいところに任せて、CITERAはそう見えないものに仕上げる控えめなブランドとして我が道を行くしかない。そんなところが逆に個性として成立し、そこに魅力が出ているのではないか?と自己分析をする。それを分かり易く、しかもかなり良く言うなら、「カローラだと思ったら性能はポルシェだった」、もしくは「ジムだと思ったら性能はガンダムだった」そんな感じだろう。


若い時は軍モノの古着でよかったけど、悲しいけどもうそこに戻る気持ちになれない。それには歳をとり過ぎてしまった。そう思うには生地感とかはき心地とか形とか色々な理由がある。それでも気にしなければよいのかもしれないがそうはいかない。何故なら、体型的に機能的に運動能力的に生活習慣的になど、今の自分に合うより良いものを選びたいと思ってしまう自分がいる。できるだけ自分を誤魔化したくない。

色々と言い訳みたいなこと言ってますけど、結局はファッションも諦めずに楽チンな格好をしたい、ってだけなのでしょうね。そんな自分を許してあげる寛容さを持てるようになってきました。


BACK TO INDEX