PRODUCT STORY

Entries by Naoki Ei, the Director/Designer of CITERA

 

AUTOBAHNの中綿仕様。乱暴に言ってしまえば、少し厚めのロングスリーブTシャツにこれ着て風を遮るコートでも着ちゃえば今年の冬はもう大丈夫。極寒地だったらそうはいかないけど、都市部だったら大丈夫でしょう。仕事着でもお洒落着でもどちらでもいいし、なんなら出掛ける時じゃなくてもこれ着て家でゴロゴロするのもいいですし。僕は家で中綿やダウンの上着を着て日当たりの良い床の上に直接寝転がりそのままうたた寝をするのが好き。






そんな風に使うのはちょっと勿体無い気もするが、とても贅沢な気分になれる。陽に当たり、暖かい空気を溜め込みふんわりと心なしか膨らんだ上着に包まれてウトウトする。まさに至福の時間、中綿は実にいい。

ダウンみたいに羽毛が飛び出してくることもないし、軽くてストレスも無くそして暖かい。先にも言ったけど、風を入れず、熱が逃げない様にするのにシェルでのレイヤリングは必須。ガッツリとした重衣料が苦手で軽いものを好む人は是非それで。









アイテムページにも書いたけど、AUTOBAHNを作った時に中綿を入れたいと思ったのがこのジャケットの始まり。実際にサンプル製作に取り掛かり、1stが上がったのはいいけれど、そこには何か物足りなさを感じた。生地DICROSS X のパッカリング具合は激しく出過ぎず頃合いの良い感じで非常にいい。だけどどこか弱々しく見える。そこですぐに思った対処法は、ラペルにトリムを入れる。しかしそれはパーティーっぽいデザインだし、そういうジャケットなんて自分にとってはかなり冒険的すぎるかな、と。でもでも、改めて考え直したがやはりそれ以外にフィットしそうな解消法はなかった。






「仕方ない、勇気を出してやってみるか!」と、ラペルにトリムをつけたサンプルを進めてみる。仕上がりは思っていた以上にしっくりきた。派手などころか、このディテールがないとジャケットが成立しないほど見た目に貢献している。ラペルが強調され、パッカリングや切り替えパターンにも負けずこの要素たちが三位一体となり、一つの強い存在を作り出す。

サンプルが上がるまではかなり不安だったが、上がってきたものを見た瞬間に、その不安も安心に変わった。






この仕事において、こういう時が一番嬉しい。別にデザインの仕事だけではなく、どんな仕事であってもこの種の不安から安心に変わる瞬間というのは良い瞬間なのだと思う。皆さんにも経験があると思うので、その気分は100人いても全ての人が同じ様に共有できるものだと思う。

趣味趣向、立場や住む地域がそれぞれに違っていても、こういう点で一つの感覚を共有でき、そして同じ様にあるアイテムを複数の人が着ているということも、気持ちを共有していることと同じであり、それはとても尊いことに思えてしまう。






お互い顔を合わせたことはないのに、同じものを選びそれを身につける。改めてそれを思うと強い絆の様なものが自分の中に芽吹いてくる気がする。もちろんそんなことをわざわざ思う必要はないのだけれど、もしかしたら人はそうやって物質を通し精神的に他者と繋がろうとしているのかではないか?

動物たちの様に群れを組むまでではないが、社会やものを通し、家族以外の他者とも心でつながるという喜びに似た何かを、無意識に求めている様に思える。






こういうことを言うと「夢の無い奴」と思われるかもしれないが、目に見えない非科学的なことは信じないタイプだ。しかし、「心の交信」については信じないわけにはいかない。ふと誰かのことを考えた途端、電話やメールがその相手から届く。朝起きてなんとなしに口ずさんだ歌が突然ラジオから流れてくる、とか。こういったことは割とよく起こる。もちろんこれが偶然以外のなにものでもないことは確かだが、それで片付けてしまうのは少々勿体無い。人の脳というのは夢のある方に考えたがる、と脳科学者の様に言ってしまえばそれまでだが、そこまで夢のないやつにはなりたくない。

そんなことを思う人間が作っているCITERAというブランド。そのアイテムを通し、心のどこかで繋がる人たちが増えてくれることに尽力したい。と、2020年という人類にとって大きな出来事のあった年の12月に思うのでした。今日のお話はこれでおしまい。








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