PRODUCT STORY

Entries by Naoki Ei, the Director/Designer of CITERA

STORY第39回は今期秋冬のT-Shirtsについて。
今期、T-Shirtsは3型の用意があります。
ボーダーものの半袖、長袖もあるので、それらも入れると5型あることになりますが、ここでは3型のプリントT-Shirtsのお話を。

9月の中旬に入り、今朝から空気が涼しくなり始め、残暑ともそろそろお別れの時期を迎えそう。と言っても、日差しの強さは10月中旬くらいまでは続いたりするのでT-Shirtsの出番は多い。
肌寒い時期に向けてすでに買ったかわいいニットやブルゾン、シャツなんてのも早く着たいけど、もう少しの辛抱。いや、辛抱なんて言葉を使うのはなんとも退屈。まだまだ「T-Shirtsを楽しめる」と言っておこう。



TOPOGRAPHY(トポグラフィー)とは、地形図、地勢図のこと。
よく目にするとは思うけど、それをなんて呼ぶかは、専門職かよっぽどのアウトドア派か登山愛好家くらいしか知らない。
普通に暮らしている中ではそんな地形図とも縁がないし、必要だってないですしね。

でも、この地形図ってものはずっと前から美しいデザインだなと思っていた。「デザインされた」というものではなく、平面に地面の形と高さなどを表しただけなんだけど、とても美しい。地球の指紋みたい。
誰もかっこよく美しくしようなんて思ってないのに、結果としてそうなったものだからこそ強く惹かれる。
そのもの自体に魅力があって目を留めさせる力がある。
ああ、そんな人になりたい……。

この図柄、自分でとある場所を描き起こしたのですが、結構な時間を要し腱鞘炎になるかと思いました。なりませんでしたけどね……。
そして、プリントするのにシルクスクリーンを7版使わせたことで、プリント屋さんにものすごく嫌がられました。同じ色は同じ版でやれよ、って雰囲気で。

でもそれでは本物の地勢図にならないから、負けてたまるかって勢いでこちらも強く出ましたよ。
「本当にお手数なのですが、よろしいでしょうか?ホントすみません!よろしくお願いします!」ってな具合に低姿勢で。
なので、僕の平謝りと手描き、プリント屋さんの作業時のぼやき、という苦労の末の仕上がりです。

こういう図柄は少しだけ見えてるのも良いですね、こんな感じで↓







こちらのT-Shirtsには7版も使っていませんが、以前オランダに行った時蚤の市で古い公共事業の計画書みたいな資料を買ったら、造船設計図が挟まれており、それが実にカッコよく、額装するほどの良さがあったのでいつか何かに使おうと思っていました。

結構な大きさで、全てをT-Shirtsに使うとディテールが小さくなって綺麗に表現できないため、そのディテール部だけにフォーカス。
オランダ語なので意味はわかりませんが、シンプルだけどとてもグラフィカルで面白く、背中に背負いたくなる雰囲気のためその様にした次第。
白のボディに黒でプリントよりも、黒やオリーブといった濃い色のボディにプリントした方がこのグラフィックは映えます。








こちらはロングスリーブT-Shirts。
ロンドンのとある美術館で見たデジタルサイネージ用のデザインをモチーフにしたもの。
その展覧会の前売りチケットにもこの印刷があり、とても映えていた。

チケットに小さく印刷してあるのにやけに目立つ印刷部だったので、ロングスリーブの一部分にプリントすることで、同じ様な視覚効果を得られると思いこのロングスリーブT-Shirtsを用意しました。
ブランドのロゴT-Shirtsなので複数色にし、着やすい配色のプリントカラーを選んでいます。

まぁ、白ボディに赤で四角いプリントというだけで「S」で始まるあのブランドを思い起こさせ、何やらよく分からず騙されて買う人もいたりするかしら?なんて想いはこれっぽちもありませんが、そんな人がいてもおかしくないほど訳の分からない混沌とした世の中ですね。

という思想を込めているとかいないとか……。



といった感じで3型のT-Shirtsがあるのですが、ただのT-Shirtsだけどそれはそれで裏の話があり、適当にグラフィックを作ってのせて売っているわけではないことをご理解いただきつつも、やっぱりT-ShirtsはどこまでいってもただのT-Shirtsであるわけで、その溝を埋めるのは着る人のスタイルだと思っています。

CITERAは、着ていただける方のスタイルを尊重したいと考えています。
だからシンプルだけれど目が留まる内容のプリントで、「それ何?」と思わず聞いてしまう様なもの、その人の脇に花を添える様なものにしたい。

恩着せがましいものは鬱陶しく、その人のパーソナルを潰しかねない。
でも、T-Shirtsなんてそこまで深く考える必要があるものでもないし……。
など色々と深く考えてしまいます。

どうしてなのかと考えてみると、風はもう秋だからなのかもしれません。
ファッションの秋でもありますが、この秋は「哲学の秋」として、皆さんも思い思いに普段素通りしている小さなことについて、深く考えてみてはいかがでしょうか。


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