PRODUCT STORY

Entries by Naoki Ei, the Director/Designer of CITERA

STORY第25回目はFIELD CARDIGANについて。
ミリタリーユニフォームの名称に、フィールドコートやフィールドジャケットのように「フィールド」という言葉がよく使われている。

そして全く関係ないが、「FIELD」で思い出すのは80年代に英国で3人組グループColor Fieldや、ポップスバンドField Miceなんてのもいた。
そのメンバーがこういったカーディガンを着ていたかどうかは知らないが、昔のバンドの人たちはよくミリタリーウェアを着ていて、それをよく真似したものだ。

話を戻そう。
ミリタリーで使われるこの「フィールド」、その意味を改めて考えてみよう。

「FIELD=原野、野辺」

吹きっさらしの原野や、日差しを避けるものがない丘などで、戦士にとっては非常に過酷な状況である。
そんな過酷な状況にも耐えうるためのユニフォームであるわけで、それはそれは日進月歩で開発が続けられてきたのだろう。
そのおかげもあって今日、CITERAでは優れた素材を使うことができている。
PERTEX®や機能的には素晴らしいのにロゴが漢字でタグや札などが非常に残念なデザインの光電子。

さて、ミリタリーウェアの中でFIELDが使われるものにはコートやジャケットがあり、それらを称してFIELD UNIFORMと呼ぶなら、そしてそれを乱暴に日本語に訳すならば「野っ原着」となる。
そして野っ原着と聞くと「野良着」が思い浮かんでくる。
農民が普段農作業などをする時に着ていたそれだ。
基本的に昔の農民は常に野良着を着ていたのだろう、と想像できる。

歴史をみればわかるが、農民は常に戦っていたのだろう。
戦う相手は、予測不能の天候、貧しさ、餓え、年貢、支配者などなど。
相当理不尽な扱いを受けていただろうにそれでも何とか生き抜いてきたわけだ。
とにかくぼろぼろになっているイメージ。
そう考えると、日本人にとっては軍服よりも野良着の方がより身近なもののような気がしてくる。
戦争で戦うことより、生きるために戦う。
勝つことも終わりもない戦い。
身近とは言ったものの、戦後農家の数が激減し、時代も変わって農民というよりも「生産者」という洗練された存在になっているわけで、あの野良着ももう目にすることもなく、今では普通の作業着である。
子供の頃、友達のじい様が野良着姿でクワを担いでいたのを思い出すくらい。

野良着もそれなりに機能的に作られていたのだろう。
寒さから身を守ったり、ヒザやヒジには当て布や糸を縫い付けて補強をしたり、藍染で防虫したり。
資材や技術がない中でも工夫しながら最小限の機能性を持たせていたにちがいない。
ワタや綿は重く乾きにくいなど今と比べてしまえば雲泥の差であろう。

そう考えると現代は何て恵まれているのだろう。
体から出る熱を溜め込んでくれたり、放出される水分を熱に変えたり、雨や風を通さずに、蒸れないように不快な湿気や熱は外に放出してくれたりと、至れり尽くせりである。
農作業に従事する方、戦場で戦う方にとって随分と衣料による負担は減ったことだろう。

将軍様に年貢を納めるわけでもなく、戦場に放り出されるわけでもなく、2018年に都市でぬくぬくと機能的な衣料を着て快適に生活している者には、これまで話してきたことは一見全く関係ないように思えるが、実際には全ての過去と現在は同一線上にあり、切っても切れない関係である。
なので、戦場、農地、都市を職場にするどの人にもCITERAを知ってもらえる機会を増やし、実際に触れることができるようにしていきたい、とFIELD CARDIGANを見ると思ってしまうのである。

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