PRODUCT STORY

Entries by CITERA


タートルネックは難しい。ニットであれば話は違うが、Tシャツとなると難しいのである。昔のヤクザ映画とか高校球児のイメージになってしまって、どうも古臭く思えてしまう。もちろん、昨今リリースされているタートルネックのTシャツはそんなスタイルにはならないのだろうけど、そこそこ歳を重ねている人にとっては、トラック野郎の菅原文太や80年代のドラマに出てくるヤンキースタイルが思い浮かび、到底おしゃれに思えなくなってしまうのではないだろうか。斯く言う私自身がそう思ってしまうのだ(意図的だが)。





ということで、絶対にそうならない(見えない)スタイルの暖かくて快適なタートルネックロングスリーブTシャツを作った次第である。といっても、あくまでもTシャツであるわけだから、見るからにコンフォタブルなイメージがいいわけで、首は折り返すほどもない長さにし少したるむ感じで、少し広めに設定。さらにコンフォタブルに見え、しかも実際に着てもそうである様に、ふわっと空気を含み柔らかな生地であった方がいい。着てこそわかる、でもいいのだが、見ても分かる、という方がどこか説得力を持つように思う。実際に手に取って袖を通したときに、「あ、やっぱりね、思った通りだ」となることをこちらは見越して作っている。そういったことは、どのアイテムに関してもそうあるべきだし、実際にCITERAではそういった作り方をしている。






ディテールが多い物はそういったことが、割とわかりやすいのでいいのだが、Tシャツとなると要素が少なく画面越しに見た置いてある平面的な画像だけでは非常に伝わりづらいから困ったものだ。しかし、それでもできるだけ伝わって、実際に手にした時に現物から感じることを、事前にイメージしやすいほど、コンフォタブルな雰囲気がこのTシャツに関しては見てとれるほどの作りであると思う。とはいえ、ふわっと柔らかく優しそうに写っているのは、置き方が影響していることも多いにあるのではあるが……。まぁ、作るときだけではなく、画像を作る上でも同じように、このアイテムがどんなであるか?そしてどんな方向性を持っているのか? ということが分かる様に配置しポーズさせているわけである。ただ綺麗に整えて置いて撮っているのではなく、このTシャツで言うと、天女の羽衣の様に軽く柔らかく優しくコンフォタブルであることが伝わるにはどう撮ったらいいか?と言うことを考え、スタジオの地べたに這いつくばりながら作業しているのである。





そんなことまでして撮っているのは、こちらとしてはごく当たり前のことだが、こういう職種以外の人にはこういった細かなことは伝わっていない様に思えたわけで、恩着せがましく書いてた次第です。

要するに、起毛して、柔らかくて、絶妙な高さと巾広めのタートル具合意外、特筆することがないシンプルなアイテムだからそういったことを書いているわけなのである。あぁ、言ってしまった。クールな作者というのは、あまり余計なことをぶつぶつと言わないもので、こういうことをすればするほど、作品が陳腐に見えてきてしまうのは過去を見れば分かるわけで。

モーツァルトが、何か余計な言い訳とか補足する様なことを書き残しただろうか? エリック・サティが音と音の間の静寂に関して言葉で説明したであろうか? 過去の偉大な作者は黙って譜面と楽器だけに語らせるのである。そいうことなのだ。





素晴らしい作品は、誰がなんと言ったとて、それ自体に触れれば、薄っぺらく安っい言葉など、一瞬で吹き飛ばしてしまうのだ。このタートルネックのTシャツも、この陳腐なメルマガを吹っ飛ばすかもしれない。それは神のみぞ知る領域である。昔、三波春夫先生が言った様に、お客さまは神様なのである。

全く関係ない話であるが、三波春夫先生が話に出たついでに。
彼は戦争へ出兵しており、自分の様なものが戦地で何の役に立つのであろうか?と思いながら戦地へ送られて行ったそうだ。しかし前線に立たされ、戦地で多くの戦友を失うなど、過酷な戦争体験をしたそうだ。その話を聞いてから、彼の最も一般的に有名な1964年の東京オリンピック音頭や、先の「お客さまは神様です」という言葉の響きは、突然に重く心を撃ち抜くほどの力を持つ様に思えるのであった。言葉というのは、そこに在るようで無く、無いようで在る。全てはその後ろにあるそれを放った人の心と経験なのだな、と思う。





私は首元を冷やすと風邪をひきやすい。なので首を守るのは習慣付いているのだが、タートルネックをあまり着ることはなかった。フーディや首まで覆うジップのフリース、マフラーやネックウォーマーなどで守ることが常であった。この冬はこれを着ることでベースの防寒をするだろう。冬になるとベースのTシャツなど見えないが、確実にあると無いとでは違う。それは言葉のように、あるようで無く、無いようである。このTシャツは他人からは分からないが確実に快適なベースレイヤーになってくれると信じている。










BACK TO INDEX